十七歳の碧い夏、その扉をひらく時 <第二章>
チャイムが鳴るのと同時に俺は教室を後にした。今朝のメールの内容は、放課後に動物園に行きたいというものだった。
「片桐君! こっち!」
聖ミカの校門の前にある横断歩道の脇で、未咲が手を振っていた。
「時間ぴったりだね」
未咲は声を弾ませて俺の横に並んだ。そして校門の所で一緒に待っていた友達らしき女二人に大きく手を振った。
「目立つからやめ……」
俺の声をかき消すように、「いいの! 自慢しちゃいけない? 初めての彼氏なんだもん」と未咲は言った。
「噂になったらマズいだろ」
「どうして? あの子達にはもう喋っちゃった」
「マジかよ……なんで自分から言うんだよ」
未咲は小さな声で「ごめんなさい」と言った。長いまつ毛にうっすらと涙が浮かんでいる。
作品名:十七歳の碧い夏、その扉をひらく時 <第二章> 作家名:朝木いろは