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朝木いろは
朝木いろは
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十七歳の碧い夏、その扉をひらく時 <第二章>

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「悠さ、この前聖ミカの校門で誰かと会ってたよな? ついに彼女ができたとか?」
「え、本当なの?」
 あかねは訝しげな顔つきで俺を見た。
「いや、人違いだろ」
「従妹がメールしてきたんだよ。お前が校門の前にいたって」
「従妹?」
「言ってなかったっけ? 四月に聖ミカの中等部に入学したんだよね」
「何しに行ったの?」
 あかねが尋問をするような尖った声で尋ねた。
「ついに女ができたってわけか」
「そうなの?」
「悠はモテるから。聖ミカでも女子大生でも選り取り見取り。誰とでも付き合えるもんな。いいよなぁ、顔のイイ奴はお得で」
「またそれかよ。俺がどこへ行こうと何をしようと勝手だろ。お前らに関係ない」
「いいじゃん。教えてよ。親友だろ? 彼女ってどんな子? 可愛い?」
 洋人が俺の肩に再度手を回してきた。その瞬間、腹の中で何かがはじけた。
「失せろ」
 俺は吐き捨てるように言い、洋人の胸の辺りを手のひらで力いっぱい押した。
「何すんだよ」
 今度は洋人がうめき声を上げながら胸倉をつかんだ。その拍子に、俺の制服の上着のポケットに入っていた携帯が鈍い音を立てて地面に転がり落ちた。慌てて拾おうとしたが、あかねの方が数秒早かった。携帯の画面を見て顔を硬直させたあかねは、「最低」とつぶやくとそのまま走り去って行った。洋人もその後を追うように追いかけていった。あかねから投げるように手渡された携帯に目を落とすと、画面には未咲からのメールが表示されていた。今朝メールを確認した時からずっとこの画面のままだったのだ。