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朝木いろは
朝木いろは
novelistID. 42435
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十七歳の碧い夏、その扉をひらく時 <第二章>

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 あと数十メートルで校門というところで、あかねと洋人が並んで歩いているのが見えた。幼い頃は仲良しでいつも三人一緒に登下校していたが、最近はそうでもない。自分が二人を避けていることに少し罪悪感を抱いたが、今朝はこの興奮じみた充足感を誰にも邪魔されたくないと思った。 
 道路の端を歩き、知らん顔で二人の横を通り過ぎようとした。だがその時、洋人に肩をがっしり掴まれてしまった。
「無視すんなよ。冷たいなぁ」
 洋人はヘラヘラした口調で言った。
「三人で行こうよ。私たち、“あやか”じゃない」
 あかねはこぼれるような白い歯を惜しげもなく出して笑った。
「その言い方やめろよ。恥ずかしいだろ」
「あかねのあ、やまかわのや、かたぎりのか、三人そろってあやかトリオ~」
 洋人が急にメロディーを口ずさんだ。この歌は小学一年生の頃、当時流行っていたCMの替え唄として俺が作詞したものだった。あやかというのは、当時一大ブームを巻き起こしたヒーロー戦隊もののテレビ番組で主演だった俳優の名前だ。綾家龍之介に憧れていた俺たちは、自分たちの頭文字を集めると偶然“あやか”になる ことが何よりも嬉しかったのだ。