十七歳の碧い夏、その扉をひらく時 <第二章>
無機質に鳴り響くメールの着信音で目が覚めた。既に遅刻ギリギリタイムだ。慌てて上半身を起こし、カーテンを開けた。携帯を見ると“放課後デート”という文字が目に飛び込んできた。俺の心臓はデートの三文字を見た瞬間、大きな音を立てて反応し始めた。恋愛に対して耐性がないせいだろう。ちょっとしたことですぐに心拍数があがってしまう。胸を躍らせたり、反対に暗くなったりとコロコロ変わる感情の波に、俺はきっと飲みこまれてしまうだろう。素早く制服に袖を通しながら、自分自身を冷静に分析した。
「朝ご飯食べなさい! 遅刻するわよ」
母さんの声が階下から響く。普段から腹式呼吸を実践しているせいだろう。声はかなり大きい。食卓テーブルにつき、ご飯とみそ汁、甘い卵焼きを一切れ、そしてシーザードレッシングのかかったレタスを一口、胃に流し込んだ。時計を見ながら歯を磨き、バスに飛び乗った。
作品名:十七歳の碧い夏、その扉をひらく時 <第二章> 作家名:朝木いろは