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セールス・マン
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プリンス・プレタポルテ

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 母は熱心なプロテスタントであったが、私自身は、言うほどには。最後に教会へ行ったのは15のとき、最後に放校となったイギリスのギムナジウムから連れ戻され、冒険に身を置こうと決めた真夜中。眠りをむさぼる良き羊達を見守る月が、南京錠をこじ開ける私の手元も平等に照らしていた。みすぼらしい教会の、年代だけは刻んだ祭壇。今まで記憶の片隅にすらとどめなかった神の御許に跪き、私はひたすら祈った。何を? 成功? 名声? 富? 否、あのとき私は、それらを手にすることではなく、それらが存在することを祈っていたのだ。もし存在するならば、それを掴むことは容易だ。自信さえあれば。だが、もし幾ら探しても見つからなければ?
 神は祈りをかなえた。その代償に何かを奪った。年を経れば、嫌でもわかる。願いを聞いて、神は嘲笑っていたに違いない。私の力があれば、全てを手にすることなど最初から可能だったのだ。だが、全ては儚い。モルヒネが誘う陶酔の中で、自分の屍がフォレストローンの墓地に埋葬されるシーンが何度も繰り返される。墓標はなく、参列者するのは牧師と墓堀男だけ。この女と、何が変わるというんだ。


 悲鳴と嘆きばかりを残して去っていったリーザ、今こそ言ってくれ。幸福を知らず、むしろ全てを台無しにしていく私の愚かさを嘲り、軽蔑してくれ。