プリンス・プレタポルテ
12.アーネスト
誓って言うが、どれほどイエロー・ペーパーが悪し様に書きたてようとも、実際の私は近寄ってくる女を見境なくベッドに連れ込むほどの野獣ではないし、セックス依存症でもない。昔から、彼らが心配するほど女に不自由したことなど一度としてないのだから。そうでなければ、この仕事などやってられない。私がどのようにしてこの地位に野上り詰めたかは……いや、これ以上言えば、それこそハーストの亡霊共と全面戦争を繰り広げなければならなくなる。
そう……だから普段は、相手が望んだり、3Wの全てが合致したりしない限り、女性に対してはそれなりに紳士的な態度で接してきたはずだった。だが諸君、今回はその全てが、鍵が正しい鍵穴に嵌るかの如く、ぴったりと当てはまったのだ。(妙に品のないレトリックだが、勘弁してもらいたい。今、彼女は余韻も醒め、気だるい面持ちで自らの小指をしゃぶっている。この怠惰に、華美な表現は不釣合いだ)
ハバナへ到着するのは明後日の予定だった。カストロより一日早く市内へ戻り、子猫のように暇を持て余し、自らの尻尾にじゃれ付いているのであろうビーを抱きしめ、心からの愛の睦言を柔らかい耳に吹き込むのが待ち遠しい。ちょっとばかし拗ねたりしても、笑って許してやる。残りの凱旋で彼女が喜びそうな手土産が見つかれば良いのだが、これまで見てきたところ、軍関連の輸送路以外は破壊されたも同然だし、住民達も自らの役目を忘れすっかり浮かれ騒いでいるから、まともに開いている観光の店など皆無に等しいのではないだろうか。
今日は先発隊が停滞している関係で、昼過ぎには小さな村落に足止めを食らうこととなった。首都を目前にし兵達は焦れと不満の色を見せているが、入内したところでどうせやることはそれほど変わらず、カストロたち首脳が集まって世界を自分達で組み立てるため会議室にこもる間、酒場での乱痴気騒ぎ。けれど社会主義者たちが考えることの予想は付く。しばらく天国を見せ、飽きた頃に故郷へ追い返される。よりよき世界のために、土に返れとはレーニンも言っていたではないか。おそらくそれを知っているのは、カストロとインテリ連中だけだろうが。とにかく、まだこの村の方が、人口密度も低い分、酒場でも統制をかけられることなく好きなだけ浴びることができる。
作品名:プリンス・プレタポルテ 作家名:セールス・マン