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迷路の風景

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風が吹いて



寺へ続く緩やかな坂の脇道に
真っ赤な彼岸花が狂ったように咲いている。
山から風が葉を揺らしながら徐々に降りてきて
風の音がだんだんと順番に近づいてくる。
傍まで来ると、一気に彼岸花を揺らす少し冷たい風。

隆史の七回忌だというのに
私は素足にサンダル履きで
寺へ向かって歩いていた。

法要はとっくに終わり
隆史の墓はそこだけ賑やかで
鮮やかな花やジュースや線香が供えてあった。

隆史の墓にもたれかかって座り
お供えのペットボトルのジュースを開けて
ゴクゴクと一気に飲み干す。

「たかし、おまえちゃんと、成仏しろよ」

私は今日で最後にしようと
本当は何年か前から決めていた。
七回忌が終わったら
しっかりしよう、しっかり歩きだそうと…
「よしっ」自分自身にそう言い聞かせ立ち上がった
瞬間、風がスーっと頬をすり抜けた。
隆史だ…
隆史が応援してくれたんだと思った。

隆史が死んだ日も、
部屋の電気のスイッチを入れ、一瞬ついた後
ピキッっと音を立て小さな光を放って電球の玉が切れた。
隆史はきっと、ずっと私を見守っている
私がこんなじゃ、いつまでたっても
彼は成仏できない。

隆史にもらったピンクのヘルメットを
墓に置いて、私は歩き出した。

寺を下る私に
追い風がずっと止むことなく吹いていた。


作品名:迷路の風景 作家名:momo