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かにとらいおん

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 ライオンは、片足を、その水に浸してみました。
水面は、ほんのり温かく、水中にしばらく置くと、心地良い冷たさが足先に伝わってきました。見た目からの思いと違ったライオンは、緊張を解いていきました。
ずっと歩いてきたライオンは、喉の渇きを覚えました。
頭を下げ、舌先で水を掬い舐めました。さらにその水面に口先をつけてみました。
食べた肉や血の味は、薄らぎ、喉の奥まで 優しく潤わせました。
 突然、ライオンの鼻先で、音がしました。その瞬間、ライオンの髭の先が、水面に落ちました。ライオンは、驚き、あたりを見ました。
やっと焦点を定めて見ると、自分よりもはるかに 小さなカニがいました。
 カニは、両脚の鋏を上げ、さらに 大きな鋏のほうは、ライオンの髭を切ったぞとばかりに 振りかざしていました。
 ライオンは、水面から顔を離すと、髭を切られた悲しさよりも、カニを哀しく見つめました。カニは、どうしてそんなことをしたのだろうか、と考えてみました。
 ライオンは、頭を下げ、カニに顔を近づけました。残った髭を揺らめかせました。
カニは、ライオンを避けるように水際を離れましたが、何もしてこないライオンに 再び近寄りました。ライオンは、その大きな足をずらし、カニの横に差し出しました。
カニは、そのふさふさとした毛の上を横切りました。カニは、安心したように 両方の鋏を下ろし、ライオンを見ました。
作品名:かにとらいおん 作家名:甜茶