After Tragedy4~志~
「ただ、あたしゃ、あんたのことは嫌い。さすが、レーニスの育てた子どもだ。理屈っぽくて、回りくどくて面倒くさい。小さい頃に植え付けられた考え方って早々変わらないのかねぇ…。」
キロは苦笑いをしている。僕はキロが何を言っているのか理解が出来なかった。
「どういうことですか?」
僕はキロに聞いてみることにした。
「レーニスが生前デメテルに口癖の様に言っていた言葉って知ってるかい?後からデメテルのヤツに聞いたんだけどさ。」
キロは、僕を指差した。
「『私は死んでしまってもいい。一生懸命、命つきるまで私にできることをやって、私を意味あるものにしたい』ってね。」
「それの何処がわるいんですか?素晴らしいじゃないですか?」
話の繋がりがいまいち掴めない。そんな僕の様子にキロは気づいたのだろう、更に不機嫌そうな顔で僕を見ていった。
「まあ、あたしは頭が悪いし、説明も下手くそだからさ、うまく言えないけどさ。やることなすことに理屈をつけるんじゃなく、もっとシンプルに生きてみたら。」
キロは、キュオネの方に向き直ると、キュオネの服に付いた埃を叩いている。
「どういうことです?」
僕は恐る恐るキロに近付いて、聞いてみた。キロの表情はここからは見えない。
「殺してないとか云々言うんじゃなくてさ、こんなかたちでシーがいなくなって寂しいって素直に感じてみたら。あんたの本音はそこじゃないのかい?」
僕は考えてもいなかった言葉を言われ、一瞬戸惑った。
「…そんなことないです。僕はシーさんの誤解を解きたいです。」
キロは振り返り、僕と目が合うとニッと意地悪く笑った。 彼女の目に映る僕はどのように見えたのだろうか…。
「そうかい?大したもんだねぇ…。まあ、よくあんなことがあった後であたしに盾突くね。はっきり言ってあんた今のやり取りで何回も本来なら死んでいるからね。」
キロは僕を指差して言った。
「そこと、そこと、そこ、敢えて綺麗に外させて貰った。あと、そこの切れているところは深く斬ればお仕舞いだね。あたしって、本当に天才。急所を外すのもコツがいるんだよね。」
僕の身体から血の気が引いていくを感じた。ふと見ると、目の前のキュオネも顔が固まっている。
キロだけが得意げに嬉しそうな顔をしていた。
作品名:After Tragedy4~志~ 作家名:未花月はるかぜ