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桃井みりお
桃井みりお
novelistID. 44422
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毎日が記念日だって思うんだぼくのとなりにきみがいるなら

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2013年3月 神様の存在よりも気まぐれなきみの言葉をぼくは信じる



 まいさんには、あの頃のことを思い出したりしないで欲しいなんて思っておきながら、ぼくは最近懐かしい思い出にばかり浸っている。でも、それは後ろ向きになっているわけではなく、新しい恋に直面して、今のぼくがあるのもあの頃のぼくの恋があったからなんだと思うからなのです。

 ぼくにとって、初めての恋と言えるのは中学3年の1年間同じクラスだったゆい(仮名)との幼い恋だと思う。好きな子が出来たのが初めてなわけでもなかったし、初めて彼女が出来たのは中学2年の春だった。それでも、ぼくの人生において影響を与えた恋というとやはり、ゆいとの恋なのだ。彼女はとても明るくて活発な女の子だった。テニス部でショートカットのよく笑う女の子だった。3年で初めて同じクラスになるとすぐに仲良くなった。当時はお互い苗字を呼び捨てで呼び合っていた。

 そんな彼女は時々ぼくの部屋へ遊びに来るようになった。ぼくは彼女が好きだった。彼女はいつも明るく、両親の不仲で悩むぼくの憂鬱を忘れさせてくれた。

『好きなCD交換したねブルーハーツの5枚目とN.K.O.T.B』
『帰り道ふみきりずっとこのままで世界とふたり遮断していて』
『日焼けした二人の腕をくっつけて「あたしのほうが黒いね」と、きみ』
『「ため息をつくと不幸になっちゃうよ」きみが吸い込むぼくのゆううつ』
『制服のリボンをきみがほどいたらラムネのビンも汗だくになる』

 地元には夏祭りと秋祭りがあって、7月に夏祭り、11月に秋祭りが催される。夏祭りに一緒に行った。はじめはクラスの男女数名で行く約束だったのに、誰かの策略だったのか突然二人で行くことになった。彼女はゆかたを着てきた。普段制服姿しか目にしていなかったので、とても新鮮だった。

『「重くない?」ゆかた姿のきみ乗せてペダルを踏んだなつのお祭り』
『神様の存在よりも気まぐれなきみの言葉をぼくは信じる』
『16時 きみに会えないにちようびBGMはJitterin’Jinn』
『「すきだよ」の代わりに言った「つきだよ」に
                   やっぱりきみは気づかないよね』
『「チュウしたことある?」ってきみが聞いたあと
                   ちょっと触れてみただけのキス』

 もし、もしも一度だけ時間を戻せるなら、ぼくには戻りたい瞬間がある。それは、あの日。ゆいが電話でぼくに告白をしてくれたあの日だ。ぼくは今でも後悔している。あの時、どうして「ぼくも好きだ」と「きみが好きだ」と、ちゃんと言ってあげなかったんだろうかと。ぼくは彼女の気持ちを粗末にした。照れくさくて、かっこつけたくて、ぼくは茶化すように「俺たちそういうんじゃねぇだろ」なんて答えた。

 受験が近づいて、ぼくらはなんとなく距離ができた。結局ぼくとゆいは「そういうんじゃない」関係で卒業した。高校時代も二十歳になっても、それからもずっと「そういうんじゃない」関係のまま。
 
                          2013年3月某日