猫の妖精と魔法技術者
彼女の服装を眺める。衣服は粗末だが、ブーツはごつく立派な物だ。白骨砂漠に入る直前に積荷の積み下ろしをした国で同じブーツを見た気がする。確か軍用ブーツだとは思うが、何処で、如何にして手に入れたのだろうか。
「お前、名前は?」
言葉に詰まり、俺は会話の糸口を探るように言った。
「……?」
「名前だよ、名前。通り名でもいい。俺の名前は、ヴァイル。ヴァイル・エデンって名前を持っている。お前は?」
「私。私の名前は……」
彼女はためらうように、探るように、鈴が鳴るような声で自分の名を口にした。
「ティル・ケットシー。それが、私の名前」
1/「ティル・ケットシー。それが、私の名前」――了
作品名:猫の妖精と魔法技術者 作家名:最中の中