小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

猫の妖精と魔法技術者

INDEX|3ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 


 それから十分ほど進んだ位置だった。地面が道ごと陥没していた。穴は大きく、この船でも迂回せぬばバランスを崩してしまうほどだった。
「下に空洞でも通ってたのか……ここは迂回するぞ」
 とっつぁんがそう号令を下した時だった。監視係が怒声を上げる。
「社長ッ! 船体右方に何か影が映ったぞ」
 その声に、俺も外を見る。いつもは額まで押し上げているゴーグルを下ろす。これもギフトであり、一キロ未満なら手に持ったコインの文字すら読める代物だ。
 砂が波を立てる。まるで砂の中で何かが泳いでいる様な、アレは……。
「二時の方向に何かでかいのが見える。あれは……ワームだ!」
 直後、ブリッジのモニターは監視台から送られてきたその映像を映し出した。
 そこには巨大な虫がいた。ミミズとムカデを足して二で割ったような外見。ただし、その全長はこの船に匹敵する。この砂漠特有の攻撃的なフォルムを持つモンスター、サンドワームだ。サンドワームは砂の中に身を隠す。呼吸の為に一度外に出たのだろう。
「あいつか、道を壊したのは。あの大きさじゃ、今のこの船の武装でどうにかなるもんじゃないぞ」
「気付かれないことを祈……あっちゃぁ、やばいぞ、こっちに気付きやがった」
 とっつぁんの声色は、珍しく余裕のないものだった。いくら武僧上がりの商人が率いる商団であるとはいえ、あのサイズの魔物の討伐は商人には荷が重い。
 一応、この船にも砲台の類は幾つか付いている。付いているのだが、俺の留学の為にしばらくこの船を離れることになっており、その最後の点検の為に対魔物用の武装の殆どは使用不可の状態なのだ。砂漠の最後の最後、このタイミングで遭遇するのは運が悪い。
 兵装型ギフトの運用は慎重に行わなければならない。風の噂であるが、兵器型ギフトの運用試験を行った結果、その研究所が一瞬にして蒸発したとかなんとか。その話もあって、タイトなスケジュールとシビアな人員配置の保守点検であったが、ここでそれが裏目に出た。
「俺がテッポウマルでどうにかする。発破でも何でもいいから、とにかくアイツを倒せそうなのを工面するか、全速力で逃げる準備をしてくれ」
 それこそ発破でも高高度航行でもなんでもいい。貯蔵エネルギーを使いきって納期が遅れるぐらい、死ぬよりマシだ。
「ちょっと待て。俺たちが逃げるとして、お前はどうなるんだ」
「どうにかして乗船する。できなければ、次の街で合流。大丈夫、テッポウマルの機動力なら、二十四時間もあれば踏破できる。下手すると先に付いちまうかもな」
 これ以上の窮地はそれこそ死ぬほどあった。盗賊が乗船してくるよりは随分とマシだ。
「一分だ、一分で逃げる準備を終わらせる。それまであのミミズを頼むぞ」
 そう言うと、とっつぁんは正面の放送機へと立ち向かった。
「野郎どもっ! ガキが時間を稼ぐんだっ! 尻まくって逃げる準備をしやがれっ!」

 ガレージには山ほどのガラクタと、そして数体の人だか動物だかよく分からないものが並んでいる。これらはゴーレムと呼ばれるギフトの一つであり、その中から人に近い形のゴーレムを選ぶ。
 その姿は鈍重な鎧。腕や脚は太く短く、首は短すぎるのかそれとも太すぎるのか、頭と同化している。全長は三メートル弱で、甲冑に甲冑を着せたかのような重厚なフォルムが特徴だ。
 その腕は発掘時には既に欠損していた為、この船に積んであったギフトを拝借して作った二連多種砲を無理矢理連結している。
 他の物は今も整備中で、比較的整備の進んでいるこれを選ぶ。これもまだ武装の整備が終わっていないが、動かないよりマシだ。そのゴーレムの背部に位置するハッチを開く。そこには人一人がやっと入れる程度の狭い空間があった。その空間に滑り込むと、ハッチは自動的に閉じた。
「起きろ、テッポウマル!」
 その声に呼応するかのように、俺が『テッポウマル』と名付けたゴーレムはアイカメラを光らせた。
 額のゴーグルを下ろす。その画面にはテッポウマルが置かれているガレージ、つまりテッポウマルがアイカメラにて見ている光景が映し出されている。このゴーグルはテッポウマルのアイカメラと同期されており、俺の首の動きに反応してテッポウマルの首も動く仕様になっている。
「基本設定変更無し。主装設定、チェインガン、待機。副装設定アンチマテリアルライフル、待機。設定完了。全設定凍結解除。スタート、マニュアルドライブ!」
 ガレージの鉄戸が上がるとともに、甲板へと躍り出る。
 歩くのではなく、滑る。足の裏には球状のホイールが爪先と踵の計二つ取り付けられており、必要に応じて駆動する。その移動方法により、見た目を裏切る高駆動を誇り、各部マジックスラスターも伴い高軌道三次元戦闘を実現している。
 ワームはすぐそこまで迫っていた。ウィークエンド号右方三十メートル。猛スピードで泳ぐ巨大な虫。
 装備は全部で五つだ。両腕にはチェインガン。これは分厚い石の城壁ですらその一発にて瓦解させる。それを毎秒五十発打ち出す代物だ。不良弾による排出不良に強く、多くの場合は固定砲台として運用されている。西洋連合の騎士団はこれを主力に魔物を相手しているという。これもまた、一つのギフトだ。
 そして、背には電気の力で鉄の塊を押し出す大砲が付いていたのだが、発電機関の劣化による出力不足が原因で取り外した。
 もう一つ、両腕には便宜上、アンチマテリアル(AM)ライフルと呼称されている大型銃が装着されている。これも後から付け足した武装で、これもまた、騎士団が運用するギフトである。主に固い鱗や甲羅を持つ魔物に対して運用される。
 この船には元からこの様な武装が数多く積んであり、俺は戦線維持のための補給船であったのではないだろうか、と見ている。テッポウマルはそれらを組み合わせて作り上げた対魔物用単独制圧武装なのである。
「主装、安全装置解除」
 まず、右の銃口をワームに向ける。チェインガンの轟音がリズミカルに砂漠で響く。
 着弾、着弾、着弾! 狙いは正確無比。虚空を一直線に、全ての弾丸はワームの腹へと吸い込まれる。
 チェインガンを乱射しながら跳躍。
 直後、脚部スラスターが起動。続いて背部スラスターがほぼ同時に起動。ワームの注意を自身に逸らしながら、離艦する。スラスターは問題なく動いているみたいだ。多少の不安があったのだけれど、これなら問題はなさそうだ。
「副装安全装置解除。主装連動射撃にて掃射開始!」
 両腕から爆音が響く。元々、AMライフルは遮蔽物の奥に潜伏する対象を狙撃する為に作られた貫通力の高い兵器だ。通常ならば直接生物に対して射撃することはこの兵器の役割ではない。
「――なんつぅ生命力だ」
 しかし、その超硬度を誇る甲殻にはチェインガンなどの掃射兵器では効き目が薄い。城壁を崩すには申し分ないが、魔物の外殻は石造りの城壁より硬いことが多い。その為、こういった甲殻を持つ生物には貫通力の高いAMライフルが採用されるのだ。
 都合二ヶ所。腹部と顎部を打ち抜いたにも関わらず、ワームは怯むことなくその鋏のような顎で攻勢に出る。
「当てる。とにかく当て続ける」
作品名:猫の妖精と魔法技術者 作家名:最中の中