ことばの雨が降ってくるまで
もっと影響力があって怖いもの
最近、昔話が残酷なので、それを思いやりをもって許すというやさしい結末にしたとかいうのをニュースでやっていたのを見ましたが……。
まあ、いいんですけどね。それはそれで。
それなら、たとえばゲームで人を殺したり、生き返らせたりするっていうの、それはどうなの?って思うのです。
昔話には勧善懲悪とか因果応報とか、それなりにテーマがあったのですよ。
それとその時代の世相を反映したものですとか。
ワタクシは子どもに本を読んでやったあと、子どもが疑問に思ったことに答えていました。そういうコミュニケーションこそ必要で、大人が「くさいものにふた」とばかり、これはこうだからと決めてかかって変えてしまうのには疑問が残ります。
子どもの理解力って侮れないですよ。
ワタクシが子育てをしていた頃、絵本の世界では原話に忠実にするという、一種のブームのような風潮になっていて、大手出版社では競って全集を出していました。
ワタクシももちろん、読み聞かせをしていました。
そんなとき、子どもは子どもなりに理解しようとしましたし、わからないことは聞いてきました。
あまり小さいうちは「死」の概念はないものの、おぼろげに死んでしまったら自分は消滅するというような感覚はあったかもしれません。そういう意味で死とは怖いものと捉えていたようで、『悪いことをしたらその報いで死んでしまう』と子どもなりに感じたようです。
童話や絵本ではそういった意味で子どもと共通理解を得られるので、ワタクシはあんまり残酷だからとか教育上良くないとか思いません。
それよりもテレビでやっているヒーローものや、ゲームで戦うことなどのほうが、よほど影響力が強いと思うのです。
十数年前でしたか、ある女の子が友だちの頸動脈を切って殺してしまったという事件がありました。それももちろんびっくりしましたが、それ以上に驚いたのが、その子は死んだ友だちが生き返ると本気で信じていたことです。
その子の供述は、殺し方にしろ、生き返ると思っていたことにしろ、ゲームから影響を受けた話が出てきたというのですから。
ワタクシはそのことの方に戦慄を覚えます。
また、子どもが静かにしているからテレビを見せっぱなし(無条件にゲームを与えること)というのも問題です。
それも、オトコの子ですと喜びそうな戦隊モノとか仮面ライダーとかのヒーローモノですね。
仮面ライダーが悪いというのではありませんよ。大人のテレビの見せ方が悪いと言いたいのです。
ライダーキックなんて、子どもが見たらカッコイイですよね。
で、当然まねをします。このときが問題なのです。
子ども同士で共通理解の上で、ごっこ遊びでやる分にはいいのです。けれど、一方的にしらない子にキックなんてしたらただの乱暴ではありませんか。
ワタクシは子どもにテレビ(ゲームもしかり)を見せるときには、大人がどんな内容か把握して、あくまでも作り事だということ、実際の友だちにはやってはいけないこと(遊びでやるときには力を加減してやる)を教えておくことが必要だと思います。
ついでにワタクシは「いくら正義の味方でも、殺してもいいとは限らない」と言い聞かせていました。
作品名:ことばの雨が降ってくるまで 作家名:せき あゆみ