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せき あゆみ
せき あゆみ
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ことばの雨が降ってくるまで

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童話ってなに?



いつになく、まじめなタイトルになっています。まあ、たまには……ね。

前エッセイ「ことばの雨が降ってくる」に書きましたが、ワタクシが書く童話は、幼年ものがほとんどなく、どちらかというと高学年から大人向けです。
それは、自分がスランプから脱出するときに気付いたことが要因となって、自分の書くスタンスを『大人にはノスタルジア、子どもにはデジャ・ヴを』としたからです。

だから、もし、「アンタの書く物語は童話じゃないじゃないか」と思う方がいても、ワタクシは「ほっといて」と答えます。ワタクシは広い意味で児童文学を書いているのですから。

そういうことをふまえまして、ここで改めて考えたいのは、童話ってなに? ということです。

そもそも童話というのは、子ども向けのお話。というのが大前提で、その「子ども」というのが主に就学前の幼児(就学後の子どもは児童)を指すようです。だいたい3〜5歳くらいでしょうか。
そういう子ども達に読んで聞かせるものを想定した物語であるようです。

では、子ども向けのお話とは何でしょうか。
元々は民間伝承からくるおとぎ話や昔話が大本になっているようです。それを子ども向けに簡潔にまとめたものですね。
民間伝承というと、口頭で語り伝えられてきたもので、けっこう日本全国に類似した物語があるのは、商人などが行商で各地を回るときに聞いた話を行った先で話したりして広がったものですね。

一つ例を挙げますと、実は「かちかち山」の原話にはおじいさんとおばあさんは出てきません。うさぎとタヌキの知恵比べの話でうさぎがタヌキをこてんぱんにたたきのめす話です。地域によっては、うさぎはそのままで、タヌキが熊や狐に変わっています。

なぜ、そういう話が生まれたかといいますと、実際には弱い動物であるうさぎを哀れんだ人々が、物語の中では賢く強くしてやろうという思いからできたのだろうということのようです。

しかしながら、タヌキ(や、他の強い動物)が、狡猾なうさぎに一方的にやっつけられるのは不自然だということで、おじいさん・おばあさんのエピソードを加えて、うさぎの暴挙を正当化した現在の物語になっていったらしいです。

そして、明治時代になって、外国の物語などが入って来たり、童謡や創作の童話が流行りだしてくると、ひとくくりに「子ども向け」とはいいがたいものも出てきます。
『赤い鳥』運動などによって、内容が多岐にわたってきたので、「おとぎ話」「昔話」の範疇ではなくなってきたわけですね。

やがて、それらは「児童文学」といういい方に替えられていって、幼児だけの読み物でなく、児童(小学生)、生徒(中学・高校生)、さらに広く成人まで対象となって行ったのです。

ですから、今や童話・児童文学と一口に言っても幼児を対象とした物語を指すのではなく、幅広い年齢層を対象にした読み物といえるでしょう。そういった意味で、ライトノベルも児童文学の範疇に数えられるようです。