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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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ことばの雨が降ってくるまで

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つばっちの思い出・後日談



さて、つばっちがはるか南の空に姿を消してから、2年の月日が流れました。その4月の初めのこと。
朝、起きてきた長男がこう言いました。

「夕べ窓を開けっ放しで寝たら、今朝ツバメが入って来て、顔の上で飛び回ってうっとうしかった」

続いて起きてきた次男も

「なんでうちの中にツバメがいるの?」

といいます。

ワタクシ、急いで2階に上がりました。すると。

ツバメが2羽います。

1羽は廊下に張った洗濯ロープに止まってのんびりくつろぎ、もう1羽は外に出たいらしく、落ち着きなくぱたぱた飛び回っています。

「あら〜〜、つばっち! 帰ってきたの」

ワタクシは落ち着き払っている方に声をかけました。と、同時に生きていてよかったと思いました。おまけにお嫁さんを連れてくるなんて……。

え? どうしてお嫁さんだとわかるのかって? 
この時点ではただのカンです。ワタクシは初めからつばっちのことをオスだと思っていたのです。

なぜ、巣を作る場所でもないのにここに帰って来たのかはわかりません。でも、このときはただ単純に挨拶にでも来てくれたのだと思いました。

ところが、翌日も同じことが起こったのです。
それで、2階の窓を閉め、ツバメが入らないようにしました。

次の日の朝、ツバメの声で目が覚めました。
外で鳴いているにしてはいやに近くに聞こえます。
声のするガレージの方へ行ってみると、ツバメが飛び回っていました。

あらら、いつの間に……。
さては2階に入れないからガレージにきたのね。

ガレージの東側の窓は隣接した家があって、通りからみえないので四六時中あけてあります。どうやらつばっちはそこからお嫁さんと一緒に入ったようです。
で、自分はそこから自由に出入りできるのですが、お嫁さんの方は勝手がわからないので、出るに出られず困って飛び回っていたのです。

すぐにガレージを開けてやると、お嫁さんツバメはたちまち外へ飛んでいきました。

それから、日が暮れると2羽のツバメはガレージにやってくるようになりました。

当時のわが家のガレージは、2台入るようにはなっていましたが、数年前から1台だけ使っており、空いた方は物置に入りきれない物を置いていました。

ツバメは、その物を置いてある側の、天井の鉄骨から梁に渡してある電気コードに、仲良く並んでいます。
一晩過ごすと、朝、外に出て行き、また日が暮れると帰ってくるという生活を繰り返しています。

いったい、巣も作らないで、何やってるのかしら?

ワタクシはそう思いました。

数日経つうちに、ガレージにはつばっちだけがくるようになりました。

「あんた。ふられたのね」

ほんとうに、このとき、ワタクシはつばっちがふられたのかと思ったのです。

それからまたしばらく経って、ある雨の日のこと。
ツバメも雨の中、大変だろうな……と思いながら、ガレージにいってみました。

薄暗いガレージのなかに、ツバメの影が黒く見えます。その影が……!

「え?」

数えてみると……1・2・3・4・5・6・7

「な、ななって。七羽〜〜」

ふ、増えています。思わず電気をつけました。

いつもの電気コードには、ずらりと並んだツバメの姿があったのです。

つばっちはどこかに巣を作り、お嫁さんが卵を抱いている間は自分だけがうちにきて、子どもが飛べるようになったからつれてきたのです。これにはワタクシ、感動してしまいました。

その後、ツバメはたぶん事故か何かで子どもが1羽減りましたが、6羽はいつもそろって夜にはわが家で過ごしていました。

さらに翌年、また次の年と……同じようにツバメの一家はわが家にやってきては、夜だけ過ごしていました。それがだいたい7年くらい続きました。
ですが、ある年、車をもう1台入れるため、物置然としていたガレージを片付けてきれいにしたとたん、ツバメはびっくりしたのか、入ってくるなりUターンして、その後近くにはくるものの、二度と入ってくることはなくなりました。