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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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ことばの雨が降ってくるまで

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つばっちの思い出・3



ちびっこのつばっちも、数日たつうちに、だんだんと黒々とした羽根が生え、風切り羽根も伸びてきました。
「つばっち」とよぶと、こちらの方を向いたり、返事もします。もう、情が移ってかわいいこと。

ある日、ワタクシが台所にいるときのことです。黒いひらひらしたものが飛んできて下に落ちるのが、後ろの方の視界に入りました。
アゲハチョウでも入って来たのかしら? と足元をみると、なんとつばっちです。

飛ぶ練習を始めたつばっちは、次第に部屋の中を縦横無尽に飛ぶようになってきましたが、飛び方がなんとも心許ないのです。いつまで経っても、ひらひらと、まるでちょうちょのよう。

外ではツバメたちが南の国に旅立つために、集まり始めています。
つばっちはときどき外のツバメの声に反応しますが、まだ飛んでいこうとは思っていないようでした。
一度、ガレージの方へ飛んでいき、外へ出そうになったので、「つばっち」と呼びかけたら、戻ってきました。

ワタクシは、この状態ではまだまだ外に行くのは無理だと思っていました。
そして、高校で理科を教えている友だちに相談し、今年はここで越冬させ、翌年旅立たせる方がいいと決断したのです。

けれど、それから2〜3日後のことです。
ツバメたちの声がさらに大きくなり、かなりの群れになって飛んでいるのを目にするようになりました。
つばっちはいつものように、家の中でひらひら飛んでいましたが、いきなり2階に飛んでいき、窓から飛び出していったのです。

窓から見ると、群れの最後尾、ひらひらと飛んでいるのがみえます。
あれで、南の国まで飛んでいくのは到底無理だろうと、心配になりました。なにしろ、翌年ふたたび日本に戻ってくる確率は27パーセントだそうですから。

しかし、飛んでいったものを戻すことはできません。無事を祈るだけです。

翌日の朝、つばっちはうちの2階の窓にとまって、一声鳴くと、また群れの中に戻っていきました。
どうやらさよならを言いにきたようでした。