ことばの雨が降ってくるまで
つばっちの思い出・2
ツバメのえさを探すだけで1日過ごして、もうへとへとになった夜。
帰って来た夫に詳細を話しました。
すると、夫はおもむろに物置からタモをもって庭にいくと、コンポストのふたを開け、タモを突っ込みました。
「げ」
すくい取ったのはウジです。
まあ、コンポストの中はおもに野菜くずですし、ウジと言ってもショウジョウバエですから、それほどバッチイものではありませんが……。
今のお若い方は知らないでしょうが、あのほら、ぼっとン便所ね。あそこにいるウジ虫は大きいんです。金蝿とか銀蝿とか家蝿とかの。今はほとんど見かけなくなりましたね。
で、そのウジを水でよく洗って、ぼろくなったざるにあけ、
「これを食べさせればいいじゃないか。あとはすり餌にすればいい」
とのたまいました。
たしかに、小ぶりのウジ虫は、ツバメの口に入れやすいです。でもやっぱり、ウジはウジ(^^;) いささか抵抗はありました。
ピンセットでつまんで、口の前にもって行くと、なんと、これがまあ、よく食べること!
夫のアイディアで、とりあえず、えさ探しの苦労は減りました。
ですが、こんな小さなやつでも、だんだん知恵はついてくるものですね。
3日もするとウジに飽きてしまったのです。生意気にもくちばしではじき飛ばすのです。
すり餌もなかなか口にせず、しかたなくミートワームをやりましたら、これが気に入りまして、こっちが根を上げてミートワームを出すまで、口をへの字に曲げて開きません。お腹がすいているくせに。
1パック300円のミートワームを機嫌良くやっていたら、1日1パックじゃ足りませんし、えさ代がかさんでしまいます。
やっぱり、どんなに泣いてもわめいても、心を鬼にしてすり餌を食べるまで虫はやらないようにしました。
そして、ちゃんとすり餌を食べたら、ごほうびに虫をやることにしたのです。
しばらくして、ようやくツバメのほうが根負けして、すり餌を食べるようになりました。
まだ産毛が多い時には、ワタクシの首のそばで寝ていましたが、だんだんと羽が生えてくると、小さな竹ざるの中で眠るようになり、そのうち、中が糞で汚れないように、縁の方にとまるようになりました。
作品名:ことばの雨が降ってくるまで 作家名:せき あゆみ