小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

ことばの雨が降ってくるまで

INDEX|10ページ/25ページ|

次のページ前のページ
 

『美人心計』にみるトンデモ設定




前漢の高祖が亡くなって二世皇帝の時代。

権勢をふるった母親呂后と、代国で善政を敷き、呂后亡き後皇帝になった恒王とその母薄姫の対立。そして恒の妻で皇后からのち、孫の代まで権勢をふるうことになる竇太后が呂后の命をうけてスパイとして代国に送られる……。

ドラマ全編を通じての主役は竇■房(とういぼう・「い」の漢字が日本語にはありません)さん。代王恒(文帝)の后、次の景帝を産み、孫の武帝の祖母として権勢をふるった竇太后です。

ここではいろいろあって呂后の侍女・杜雲汐として登場するも、代国にスパイとして行くために竇■房となのることに……いくら何でも無理がある。

公式の記録では、竇■房さんは、趙の国の出。呂后が各国王に下賜するために集めた下働きの宮女(富豪の娘を集めるというお達しながら、自分の娘を人質よろしく宮中にあげる富豪はおりませんから、貧しいところからお金で買ってくるのです)ですが、面識はありません。
どうせ送られるなら自分の出身の趙国にと宦官に頼み込むも、なんの後ろ盾も袖の下もない貧乏娘、宦官は約束など忘れて代国に行くメンバーに加えてしまったのです。

泣いても叫んでも決定は変わりません。
ですが、竇■房さん。運がよかったのか、趙国に行った王は殺されたりして何度も入れ替わっているので、もしかしたら趙国に行ったら「はい。それまでよ」だったかもしれないのです。

代国に行ったおかげで、なんと代王恒に見初められたばかりか、代王はこの竇■房さんしか愛しません。
もちろん気立てがいいので母親の薄(はく)太后にも気に入られています。

でも、このドラマではかなり薄太后は気性が荒く、竇■房さんにつらくあたったり、呂后に対抗意識をむき出しにします。
ちょっとこれはワタクシ的にはNGです。

だって、薄太后はきわめて控えめな人で、目立たなかったからこそ、呂后の牙から逃れられたのですから。
高祖が死んでから、呂后は側室を皆殺しにしました。直接手を下したのは一番憎んでいた戚夫人(人豚として厠に投げ込んだという話は、おそらくどなたでもご存じでは?)。
あとは家臣に命じて剣で殺したり、毒殺したり、一室に幽閉して餓死させたり。
おそらく無事に生き残って、しかも息子と一緒に任地まで行くことができたのは薄太后ひとりでしょう。
それもこれも、高祖がたった一度きり寵愛しただけで、あとは機織りして過ごしていたと言う人ですから。それに、恒が皇帝に推されたのも、彼の人柄の良さはもちろん、薄太后の控えめな態度があればこそでした。

それから、「あっ」と驚きあきれたのが、高祖の息子第二代皇帝の劉盈(りゅうえい=恵帝)の設定。
記録に寄れば、彼は母親呂后の戚(せき)夫人に対する仕打ちに「これは人間のすることではない」と母親を責め、心を病んでしまい、酒におぼれて早死にしています。

ところが、このドラマでは「自由になりたい」といって宮廷を抜けだして自由気ままな暮らしへと旅だってしまうのです。で、身代わりのオトコを呂后が殺して、皇帝が崩御したというお触れを出すのです。
おまけにこの劉盈さん。あとから出てきて、今度は竇太后の生き別れた弟になってしまったり。
ここまでいったらめちゃくちゃじゃないですか?

まあ、中国史に関心のない方が観れば、まったく気がつかないでこのまま観るでしょう。ですが、中国史が好きだったり、多少調べたりしているとここまで荒唐無稽だと、いささかあきれて食傷気味に……。

でも考え直して、いっそこの後はどんな設定でくるかしらと逆に楽しみにすることにしました。