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蜜柑の実る頃は

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 泰造の家の畑の向こう側に住んでいる実花と、畑を通り抜けて遊んだものだった。
だが、ある時、泰造の姿を見つけた実花が、畑を通り抜けようとした時だった。
猪避けの電流柵に触れてしまったのだ。
「駄目だよ、実花!危ない!」
気付いた泰造が体当たりして、感電は免れたものの、脚が触れた所為で障害が残ってしまったのだ。
それからというもの、何となく実花の両親は、泰造と遊ぶことを良く思わなくなった。
実花が、何度も(泰造兄ちゃんは悪くないよ)と言うのだが、幼い我が子を思う親は、怒りの矛先を変えようとはしない。
泰造の家に対しても同じだった。
「真っ昼間につけっぱなしにしとくなんざ、どうかねぇ」などと親しくする者に言いつけたりもしたようだ。
ずいぶんあとになって、電流のスイッチが入ったのは、他所から来た者の悪戯か、過った出来事だとわかったものの、噂は後味悪く残ってしまった。

 年頃になった実花は、泰造が町へ仕事に向かう頃になると、いつも両家の間にある小道の途中で、小さく手を振って送った。
泰造もそんな実花の様子を気付いていない振りをしながらも 嬉しく思っていた。
(実花も可愛く、いやぁー綺麗になったな。いい奴でもいれば……脚のことなんて気にしないで幸せになればいいが……)

作品名:蜜柑の実る頃は 作家名:甜茶