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セレンディピティ

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『内緒なんだけど……俺変なんだ』
『おじいちゃんが立ってる!』
『神様! 私を選んだんですね!』
『おい……あいつ様子が変だぞ』
『ぎゃあああー!! 化け物だー!!』
『お腹空いたよ~』
『今日はごみ箱に食い物ないな』
『あいつ!? 喰ってるぞ!?』
『この町はもう……人間がおらん』
『おい! あそこに飛んでるの』
『あのペットショップ……赤い……』
『なんでこんな事に?』
『管制塔!! 管制塔!! 墜落回避の誘導願います!!』
『うっ……うっ……お母さん……』
『どこに向かえばいいんだ!!』
『ぐががががぁぁああああああ!!!!』

 世界は一変した。

『…ル!』
 それは呼ぶ声。
『…ール!』
 遠くから。
『「アール」!』
 聴こえてくる。
『アール! こら!』
 目に映る遼の姿。
『おい! アール! 危ないぞ!』
 細く甲高く吠える、まだ小さいチーターを遼は追い掛ける。
『あっ……清正さん……町が見えましたが……』
 遼の目に映る、人の住めない気配。
『清正さん……この地区は』
『もう駄目だろう……』
『能力が広がってない地域は……きっともうないんですね……』
『ああ……皆……能力に振り回され……殺し合い……食料は減り、世界中の食料危機の国はカニバリズム(共食い)を始めた』
『フェムの触れる者全てが能力者となって、理解出来てない人達は無意識の怪物に支配されるんですね』
『俺達が教えて行くしかない』
『そうですね……僕にも責任があります。あ、ではそろそろ、香山さん達にも海上を移動してもらいましょう』
『ああ……別の土地で早く伝えなきゃな……』
『ここも駄目だったんだー』
『ハル!』『ハル!』
 遼と清正は向かい合い笑う。
『アール! 早くルーア母さんくらいに大きくなるんだよー! 風間さんにも見せなきゃ!』
 ハルに近付き、体をこするアール。
『ハル! お前も安静にしてなきゃ! お腹に悪いよ』
『普段はお前なんて言わない癖に、見栄張ってんじゃないの! パパも皐月さんの前じゃ甘えん坊だし!』
『ハハハハハ!』
『じゃあ……行きますか!』
 空を見上げる遼。
『今日は歩きたいな』
 足を踏ん張る清正。
『そうね……歩こうよ! 鳥じゃないんだから! 目の前にある道を……ね!』
 振り向く三人。突然、空に吠えるアール。見上げる三人に緊張が走る。三人の影は……別の影で覆われる。monstrousの影が。
 serendipity。
 それは一つの世界。
 それをどこかで見る世界も、必ずある。
 あなたの世界も。
 一つの世界。

【end credits】

『いい天気だ……ルーア……この世界をまとめる者が必要だと思わないか? この進化する能力を率いる指導者になれれば、あんなに自由に飛び回れる奴らを従 えられれば……ハハハ! これはルーア・バトラーの発想だ! 何でも自分で決めなきゃ気が済まない頑固な奴だった。俺には向いてない。また戦争が始まる な。田村にも見せてやりたかった。ルーア……お前、前より行儀良くなったか? 田崎は本当にいい訓練士だったんだな。後悔はしない……これが俺の生き方 だ』

風間 孝太郎 kazama koutarou
ルーア・バトラー Lu-a Batler
ルーア lu-a
田村 洋介 tamura yousuke
田崎 修 tasaki osamu

『皐月……』
『なぁに?』
『清正君とは……まぁ、なんというか……上手くやってんのか?』
『あの人は真面目な人よ……不器用なとこがお父さんに似てるわ~』
『清正さん、カッコイイですしね! 一目惚れですか?』
『下村さん! 海に突き落とすわよ!』
『ごめんなさい! もう……怖くて空軍基地も海も懲り懲りです!』
『ハハハ! じゃあさっさと清正君達を迎えに行きなさい……彼らは今の時代の希望だ』

香山 重雄 kayama shigeo
香山 皐月 kayama satsuki
下村 剛 simomura tuyosi


『鈴村部長!』
『なんだ』
『私達の職務は今の時代……どれだけ意味あるんですか?』
『ばかやろう! 俺達がいなくなったら……生き残った人間は誰を信じればいい!! 意味を考える前に一人でも救え……正義を語るなら人を救え……町田もきっと同じ事を言った』

鈴村 和敏 suzumura kazutoshi
町田 正道 matida masamiti

『達哉……奴らが来たわ! 逃げるのよ!』
『う~……う、グズッ』
『達哉! あなたは今生きてるの! もっとたくましくなって……ね……だから笑って!』
『ひなぁ~』
『ママでしょ! アハッ! 達哉ぁ。あなたがいて私は幸せよ!』

加藤 陽菜 kato hina
広金 達哉 hirokane tatsuya
加藤 達哉 kato tatsuya

『清正さん! 僕に任せて下さい!』
『ああ……奴らは飛べるだけのグループだ! 遼、お前のフェムの大きさなら奴らを……ん!』
『ハアァァァ!!』
『ハル!』
『あのバカ……遼、お前の力のお披露目は……まただな』
『ハル~~またいいとこ取られた~! て言うか体を気遣えよー! アール! ハルを止めろー!』
『遼ー! あなた相変わらず決断遅いのよー! こいつら片付けたら褒めてね!』
――親父……あんたの望んだ世界は……全ての人間に混沌を与えるものだった。でも……悪くない。人間は家族を護る意味を理解し始めた。そして、今更だが、すまない……結局俺は親父からの期待に応えられなかった。昔の親父を思い出すよ。

出浦 清正 ideura kiyomasa
アール a-l
     ◆◆◆
『清正!』
『はい! お父様!』
『お前には人を率いる力がある! 今はまだ未熟で弱い。けれどお前の勇気と優しさは一族を護るのに必要だ! 俺は成長と共に非情な決断をさせる! わかったか!』
『はい! わかりました!』
『明日は小学校の参観日だったな……必ず行くからな!』
『わ~い! わ~い!』
『ははは、清正! お前は俺の未来だ! 早く子供を持って家族の大切さを理解するんだ!』
『はい! お父様みたいになります!』
『道は自分で決めるもんだ! 自分のフェムを見つけてみろ! それを見つけた時、この能力は必要なくなるだろう』

出浦 盛清 ideura morikiyo
     ◆◆◆
『清正よ』
『はい』
『わしの能力を譲るものが見付かった』
『どうして今更手放すのですか?』
『今まで危険な目に合わせたのう……すまんかった。わしは余命半年じゃ』
『父さん……』
『わしは賭けにでる』
『何か変わるんですか?』
『変わらなければ、戦争が始まる! 巻き込まれる者には自分で選択出来る助かる道を与えねば』
『その者は、それを変えられる力があるんですか?』
『清正よ! 道は自分で決めるものじゃが、わしはその者に道標を用意する。未来への可能性を、そして春枝を護ってやってくれ』
『何の話?』
『ハル!』
『おお、春枝……頼みがあるんじゃ』
『なあに?』
『明日、わしは能力を手放す! その者の監視をして欲しいんじゃ』
『じゃあ……ちゃんとやったら春枝って言うのやめてくれる?』
作品名:セレンディピティ 作家名:ェゼ