セレンディピティ
『カハハハハ! いいじゃろ! じゃが油断は禁物じゃ!』
『危険はいつもの事よ! 能力が無くなったら私がみんなを護るわ!』
ハル hal
◆◆◆
――今日の授業どうするかな~。あ、サークルに顔出さなきゃ! あ~でも食堂で達哉と陽菜の邪魔しちゃ悪いかな。二人とも……いい感じだし。俺も早く彼女 欲しいな。可愛らしくて……護ってあげたくなるような。でも、もう就職活動しなきゃな! ニュース……最近いい話題ないな。この国に向かってミサイルの砲 撃演習頻繁だし……戦争? はは! ないない! 一発撃たれておしまいだよ! こんな小さな国なんて、そんな事起きても起きなくても、僕に出来ることない し……大学終わって就職してる今から三年後……何してんだろ。雨……止んでるな。さあ! 今日も変わらない一日! 頑張るか!! あれ……今の番組、見た 気がするな……まあ、変わらない毎日だからかな。デジャヴュってやつ? あはは! なんだかいつもと違った気分だ! 些細な事が、新鮮だ。
水谷 遼 mizutani ryo
ーー。
それぞれの道の結果とは。
分岐点。人生の中には大きく運命を変える瞬間があるように見える。
選択。それは自分にとって良いと思える未来へ。
幸福。それは幸福になる生き方をしたから。
後悔。けれどその時にはその道が輝いて見えた。
分岐点は常にある。
選択肢はなかった。
幸福な人。幸福の道を無意識に自然と歩んでいる。積み重ねていたから。
選択による後悔。それは幻想。その時には、その道しかなかった。
道とは選択で変わる程、安易ではない。
道とは積み重ね。
何かを積み重ねた先に、その者にしか見えない、道がある。
そういうもんだ……達哉よ。
◆◆◆
ここは盛清の本屋。三階建ての館。偶明堂。誰も住んでない。残された書物。鍵の開いた裏口。青年は侵入する。過去に侵入した者のように。傾いた棚。当たり前に落ちていた書物。ひとつ、開いていた本は、しおりが挟んであった。ほこりを二度拭い、その章の題名を読む青年。加藤達哉。
『synchronicity(シンクロニシティ)……か。いつまで続く……「monstrous(モンストラス)」なこの世界。死んだはずの親父が…… いや、あいつが言ったように、ここに未来の記録があるなら、未来があるなら、この世界は、前編だな……シンギュラリティへの』
【セレンディピティ~serendipity~ END 】