小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

セレンディピティ

INDEX|24ページ/43ページ|

次のページ前のページ
 

僕はいつから ここにいるだろう
いや それはおかしな自問自答だ
僕の事を理解する人は いないだろう
きっと僕のまわりも 僕の考えを知ると苦笑するだろう
季節を感じて 体が揺れて 心が揺れて
同じ事が繰り返されてる
でも静寂だ 贅沢にも感じる
そもそも贅沢とは 味わったことあるのか?
何が贅沢かもわからない 自己満足? 割に合う? そんな気分を味わって誰かに話したら 贅沢を認識出来るかもしれない
身体に感じるものは なんだろう
静かに水分を取り入れて パノラマな景色を眺めて
そんな毎日だけど大きな変化を 実際望んでいるのか
でもそれは幻想ともとれて あまりにも滑稽
まるで僕の前にいる鳥のように 空を飛ぶような事
そんな風には僕の身体は できてない
僕の前にいる鳥は 最近いつも現れる
いつも同じところに 好物が落ちているからだ
別に 仲良くなりたい訳じゃない
でもきっと明日も 落ちてるよ
風が吹かない限り いつも同じところに落とすよ
また明日も現れたら 名前をつけようかな
まわりが ざわざわしてる
そんな時期? いやそうじゃない
たまにある 気まぐれのような事
気まぐれでも 事の大きさで僕の願いが 叶うかも
たまにおきる気まぐれは いつもの光景に変化をもたらす
いつも存在しているのに 明日にはいなくなってる時がある
しかしその場所には また新しい存在
僕はその消える存在が 時折羨ましく感じる
自分にどんな変化をもたらす? それとも以前に戻りたい?
退屈は残酷ともとれる しかし平穏とも感じれる
ふと怖くなる そのいつもと違う事に
一度変われば 後戻りは出来ない
今が幸福な日々なのに その変化によって
今を懐かしむかもしれない
いつからだろう 今の環境は
元々違うはず その事すら思考が薄れている
僕の思考自体が 言葉を発しているのか
言葉とは何か違う もっと感覚的な思考
思考があるだけでも 不思議だ
みんな そうなのか?
僕は試みたくなった まわりとのコミュニケーション
どうやって? 方法はあるのか?
そんな方法があるなら 今僕は もどかしくしていないだろう
僕に今 認識できる事は なんだろう
聞こえてるのか? 話せるのか?
いつから感じるようになった? この違和感だらけの存在
今僕は まわりが見えてるか? いやわかる でも視覚とは違う
そして今僕の前に誰か現れた 何か懐かしい気がする
僕に触れた瞬間 身体を伝って響く 声?
『元気かしら。あなたのお陰で私はここにいられる』
聞こえる 正確には響く 初めて聞く感覚 でも覚えがある
『あれから、ここにくるのは初めてよ』
伝わってくる 声 触れている者の声の反響から伝わる 形
僕の中ではこれが 見えるという事だろう 僕より小さい存在 だけど僕のことを 知っている
『私は今のあなた。あなたが私に触れた時、あなたのように世界を意識した』
僕は意識が混乱してきた 記憶が薄い 記憶がないに近い
でも僕のもどかしさを この存在する者は 知っている
『いい? これはあなたが選んだ、運命の結果よ? あなたには私の声が、届いてるかしら? 聞こえていても、何も出来ないわね。私も、同じだったから……あなたは私の中で、自分の人生を語り、泣き、叫び、私のような静寂に生きることを望んだ』
僕が? 今の自分に? 望む? 僕は 今  なんだ? 僕は あなたみたいな形を してない
僕は…… あなたは 動ける それは  土に 埋まってないから
僕は まわりより少し大きな 大木
下には あなたが入れるくらいの 穴がある
僕は……あなただったの? 動けたの? 今の場所から 違うところに 何故? 僕が望んで?
記憶がないのが また もどかしい
僕は 今の この姿を 望んで?
何を語った? 僕は あなたは昔の僕? 何の為にここへ?
『あなたには 感謝してるわ……』
待って! 僕から離れないで! もっと知りたい!
あぁ 離れないで 聞こえなくなる あなたの声が
どうか戻って 語って お願い 僕は 違う場所が 見たい!
……行ってしまった 僕の希望 聞いてもらえなくなった 僕の願い
この世界はどこまであるの? 空には終わりがあるの?
逢わなければよかったのに
僕の日々は 平穏じゃなくなった
どんなにもがいても 動けない自分が 歯痒い
どんなにもがいても 葉っぱひとつ動かせない自分が 悔しい
風に揺られて 心揺らされて 僕は 無力だ
またいつもの日々 退屈であり 平穏な日々
僕はどうして 自分を捨てた? 僕はどうして今を選んだ?
そして今日も いつもの鳥が現れた
いつもの鳥は いつもの場所にいない 昨夜は風が強かった
僕の隣の木の枝から落ちるお目当ての木の実は 僕の下の穴に落ちてた
鳥は穴の中で僕の身体を足場に いつもの実をゆっくり食べた
名前をまだ考えてない鳥の言葉が 僕の身体に響いてくる
『私はあなたが羨ましい。大きく、堂々として、みんなを風から守っている。素敵な花を咲かせる。私はあなたのような 雄大な存在になりたい。私はあなたに、なりたい』
僕こそ 君になれたら どれほど感動的だろう
君には羽がある 全てを見渡せる
僕は君に なりたい
僕の願いはキミ キミの願いは僕 僕らは同じだ
なんだろう 僕の身体がいつもと 違う
身体から白い光が 僕を優しく包む
僕は今どうなってる? 僕の中で流れてるみたいだ
キミが見える
『あなたが見える』
お互い形は曖昧な思考同士 認識出来る
あぁ キミが遠くなる どこに行くの? 淋しいよ 怖いよ
『大丈夫。あなたは特別な存在。何度でも、目を覚ます』
なんだろう この感覚 初めてだ 僕は今……眩しい!
真っ白だ! 何も見えない 違う 何か違う色だ ゆっくりと 違う色が
僕は 今 動いてる? 身体が下に引っ張られる
バランスが必要だ
僕は 初めて僕を見上げている 僕は今羽を広げている
僕は 今自分の意思で羽を動かしてる
身体が軽くなる 軽くなる 浮いてる!
多分 不器用に 僕は飛んでる
でも 少しずつ 少しずつ 身体に慣れていく
僕は今ままでの自分を 見下ろしている
なんて大きな木だ なんて美しい白と薄紅色だ
なんて空は 気持ちいいんだ
僕は今 奇跡であることを 理解した
僕とキミが同じ心で 同調したんだね
僕は今 全ての願いが叶った
なんて空は広いんだ なんて世界は美しいんだ
色んな生き物が見える
あの人は 昔の僕? 何か建物に入った 僕を見たい
見える 僕が あなたが 僕?
僕に気付いた 近付いてくる 何か喋っている
ゆっくり近付く
笑顔の僕だ 僕? いや 君は……
それは僕に言っているの?
誰?
『私はあなたに、なりたい』
―僕の笑顔だ……僕の……いや……ハル? 僕は自由な鳥……鳥? 誰? あなたは誰?
 皐月は遼と目が合う。
『あ! 目が……醒めた?』
『あ、あなたは……誰……くっ……誰、です……か』
 清正も上半身を起き上がらせる。
『め! 目覚めたか!』
 遼の言葉を確認したと同時に、香山と盛清の控える医務室に向かって駆けつける。すぐに響く皐月の足音は耳に入った。
『あの……ここは……』
『まだ寝ていろ!』
作品名:セレンディピティ 作家名:ェゼ