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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
novelistID. 43462
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After Tragedy2~僕とキュオネの出会い~

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僕とキュオネの出会い2


 僕はその後も木から降りずにぼんやりとしていた。すると、人の話し声がすぐ近くで聞こえてきた。
(こんなところに来るのは僕くらいだと思っていたのにな…。)
 シーの住んでいた石の牢屋に今は誰も近づくことはない。ここは皆にとってみれば、すべての不幸が始まった不吉な場所なのだ。レーニスが偶然この石の牢屋に足を運び、シーと出会わなければ、人間と神は共存し続けていたに違いない。そう人々は考えているので、ここを殊更忌み嫌っていた。僕が潜伏場所としてここを選んだ理由もそこが強かった。牢屋の鍵は壊れているが、ここに普通の人間はまず入らない。入るのは僕を呼びに来る、ライやトイくらいだ。

 僕はふと3日前に見た花束を思い出した。そういえば、あれは一体誰が供えたのだろう。もしかすると、この声の主がシー兄ちゃんに花を供えてくれたのかもしれない。僕が知る限り、シー兄ちゃんが亡くなったこの場所に花を供えようなんて考える人はいない。それもレーニスが気に入っていたれんげの花を供える人間なんているはずがなかった。僕は、それを見たときに思わず鼻の先がつんと痛くなったのを思い出した。
 2つの人影は木のすぐ傍までやってきていた。僕は若干申し訳ないような気もしたが、その2人組の様子を伺った。2人組の1人の姿を見た時、僕は心臓が止まりそうになるくらい驚いた。背格好がレーニスにそっくりだった。ただ、僕の位置からだと彼女の顔は死角になってしまっていて見えない。
「キュオネ、人間界で生活をする前に、一応護身用の魔法1つくらいは覚えて欲しいのだけど。この布を使えば、キュオネでも出来るから。」
 レーニス似の女の子の連れの女性は、ストールに似た形状の青紫色の布を手渡した。キュオネと呼ばれたその少女は、その布を貰うのを躊躇っていた。僕は、その布に見覚えがあった。僕が寒い時にレーニスがよく貸してくれたそれに似ていた。あまり有名な話ではないが、レーニスは身体が弱く、魔法を使うのに媒介するものが必要だったらしい。その媒介するのもとして使われていたのが青紫色の布だった。