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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
novelistID. 43462
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After Tragedy2~僕とキュオネの出会い~

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「ごめんなさい、もう帰るね。」
 僕は余程酷い顔をしていたのだろう、ライは僕の顔を見ると申し訳なさそうに、大人しく桜の木から手を離して、もと来た道の方へ歩いて行った。

「それだけじゃないよ…ライ。でも、ごめん。駄目なんだ…。」
 僕は、ライに聞こえないように呟いた。
 まだ辛うじて視界に入るライの背中が寂しそうに丸まっている。きっと、さっきの発言を後悔しているのだろう。追いかけたい気持ちになる。なるけれども、これでいいんだ。僕が中途半端なことをしてしまったからこんなことになってしまった。ライには、トイと幸せになって欲しい。僕なんかのことは忘れて…。
「僕だって、ライのことは好きだよ…。でも、僕はライを好きになってはいけない…。巻き込んじゃ駄目だ。」
 僕はライを意識し始めてから、これまで何度となく自分に言って聞かせてきた言葉をもう一度言ってみた。レーニスが亡くなって、シー兄ちゃんが死んでしまった時、優しく手を差し伸べてきてくれたライのあどけない子供の頃の顔を思い出すと泣けた。ライがライの家に僕の居場所を作ってくれた。ライが僕にもう一度笑うことを思い出させてくれた。身寄りがなくなった僕が今日まで生きていけたのは素直で意志の強いライのおかげだった。
 でも、だからこそ、ライはもう普通に幸せになった方がいいと思う。

 僕には幸せになる権利がない。
 僕はシー兄ちゃんのことを忘れて幸せになりたくない。

 だって、シー兄ちゃんがあんな可哀そうな誤解を受けたままになっているのに僕だけが幸せになるのはおかしい。