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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
novelistID. 43462
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After Tragedy2~僕とキュオネの出会い~

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 トイには『休暇でシー兄ちゃんの住んでいた石の牢屋でぼんやりしたい』と言っただけなのに、どうしてこうなってしまったのだろう。僕があの家を離れている間に、ライがもう一度気持ちを立て直してくれればいい。そう思って、住み込みで働いているトイの家の手伝いを一時休ませて貰った。次期村長のトイの家に送られてきている大量の文章を読めるのも返事をかけるのも僕だけだ。僕がいなければ、トイは困るに違いない。ここにいられるのはトイが留守にしている5日間が限度だろう。
「ユクス、帰ろうよ!心細いよ…。」
ライは、小さな手を桜の木に置き、訴える。下から見えるライはいつも以上に小さく見えた。その姿に僕の心は少し揺れる。
「トイが帰ってきたら、一緒に帰るから。」
 それが、僕がライにしてあげられる精一杯のこと…。
 ライだってそれを理解していたはず。だからトイと結婚して、今までずっとやってきた。これなら大丈夫だって、僕は胸を撫で下ろしていた。

 なのに、ライはトイとの子を妊娠してから様子がどうもおかしい。引き返せないと分かった瞬間から、ライは情緒不安定になった。僕だって鈍感じゃない、ライが未だに僕の事が好きだって理解している。だから、僕は一旦距離を持とうと思った。折角、僕と違ってライは幸せになれるのだから、僕にわざわざついてくることはない。トイなら、絶対に幸せにしてくれる。親友の僕が保証する。

「トイじゃ駄目なの…。」
 ライは懇願するように叫んだ。こんなのは、嫌だといった雰囲気でとても苦しそうに見えた。彼女の痛々しい姿を見ると僕は悲しくなった。
「ユクスは頑張ったよ…。もう、全て忘れ…」
「僕とは無理なことくらい分かっているだろう…。」
 僕はライの言葉を遮った。それ以上言わないで欲しい…頼むから。僕だって、悲しい…。僕をこれ以上悲しませないで欲しい。そんな僕の態度が更にライを怒らせてしまった。

「シー・ウインドスのせいね。ユクスの幸せをあの人が奪った!!!」
 ライは、そう言い放った。きっと僕がそう言わせてしまったに違いなかった。
「シーさんと一緒に居た期間なんて、1年くらいだったじゃない…。私の方がシーさんと一緒にいた時間よりも長いのに何で…。」
 僕は悲しくて、苦しかった。