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その後の仁義なき校正ちゃん

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「フフフ。そんなに心配してたんだ?」

 校正ちゃんが、また、僕の心を読んで先回りするようなことを言った。

「大丈夫よ。キミが失敗したって、最終的には、ちゃんと修正が上手くいくように根回しは万全だったんだから。ねぇ?」

 校正ちゃんが振り向いた先には、榊原さんの姿があった。ここは、さっきの会議室から2つ下の階にある小さな休憩室だ。プレゼンが終わってからすぐに榊原さんに引っ張られるように階段を降りてきた。何かあるとは思っていたけど、やっぱり校正ちゃんの知り合いだったんだなぁ。でも、どういう関係? 元弟子とか?

「いえいえ。私の方こそ助かりました。こちらに送らせてもらった資料って、同僚が作ったんですけど、今日こちらに来られなかった上司が内容のチェックをしたんですよ。私がやってたら絶対に起こらなかったミスですね。すいません。うふふ」

 何だか校正ちゃんと同じ匂いを感じる。女の人って、みんな、こういう感じで不敵に笑うのが好きなのか? それにしてもスゴい自信だ。絶対にって……。

「まだ、わかんないの? 相変わらず鈍いわねぇ」

 校正ちゃんが、バッテン印のランプをピカッと光らせながら、短い右手を顔の高さまで上げて、指をパチンッと鳴らして合図した(ような気がする)。
 すると、榊原さんの胸の少し前辺りの空間に、何か手のひらサイズくらいの人形みたいなものが姿を現した。
 目を凝らして見たら、それは、こんがりと日焼けした肌を誇示するようにポーズをとっている小さなボディビルダーだった。短く刈り込んだ頭髪と逆三角形のサングラス、ブーメラン・パンツの黒が、やたらと印象に残ってしまう。

「あのコレって……」

 もう有線通信を使う必要もないので、僕はフツウに口を開いた。

「えーと、彼は……校正くんです。もっと違うニックネームをつけてる人もいるらしいけど、どうせ今みたいに名前を呼ぶ機会って少ないからね。デフォルトのままなのよ。貴方だって、そうでしょ?」

 現れた瞬間にソレが何なのかは理解できたけど、何と言うか、もの凄い違和感があった。だって、外見が校正ちゃんと全く違ってるんだもの。ぬいぐるみでもウサギでもなくて、サイズ以外はドコから見ても人間の男性だし、目のところがバッテンじゃなくてサングラスかけてるし……。

「おう、ヨロシクな。ところでさ、お前、こんな気ままでエラそーなヤツとコンビ組んでるんじゃ、正直やってらんないだろ? とことん運が悪いんだな。他人事ながら、可哀想になっちまうなぁ。ハハハハハ」

 校正くんが、決めポーズを次々に変化させながら挨拶(のつもりなんだろう)した。な、なんだコイツは。校正デバイスっていうのは、初対面の人間に対して遠慮の欠片も持ち合わせてない非常識なヤツばっかなのか? 榊原さん、こんな野郎とずっと一緒にいて、よく平気だなぁ。