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その後の仁義なき校正ちゃん

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 それにしたって、どうして僕は、こんな、しどろもどろなモノの言い方をしてしまうんだろう? この間の土曜日、校正ちゃんに言われたことを思い出して、またもやドギマギしてしまっている自分に気づかされた。

 あたしの趣味に決まってるじゃない!!

 あのとき、校正ちゃんは、そう言った。言われてすぐには何とも思わなかったんだけど、後からよくよく考えたら、アレは「キミを選んだのは、あたしだ」という意味だったんじゃないのか? 

 新聞社や出版社などの言葉や文章を扱う専門職に就いている人間ではなく、一般人の中から草の根の校正者を育成して社会全体に校正の必要性を広める、という役割を担って存在しているのが校正ちゃんだ。でも、ソノ対象に選ぶのは、別に僕でなくても——他にも校正デバイスはたくさんいるらしいし——構わなくて、ただ、校正ちゃん個人の「趣味」によって白羽の矢が立ったのが僕だったということなのではないか? ということは、もしかして校正ちゃんは……。

 そのことを本人に尋ねてみた方がいいのかどうなのか決心がつかないないまま既に数日を過ごしてきている。校正ちゃんと向かい合っているとドギマギしてしまうのは、そういうモロモロの事柄が僕の心の中で渦を巻いているからだった。

 ——とか何とか、グズグズと考えを巡らせていると、僕のテキトーな誤摩化しに対する律儀な反応が、校正ちゃんから返ってきた。

「ちょいとヤボ用でね」

 校正デバイスにとってのヤボな用事って、いったい何なんだ? だいたい、校正ちゃんは僕の頭の中に埋め込まれているわけだから、僕以外の人間とのつき合いなんてあるわけないだろうに……。

「で、本題なんだけど」

 いつものように自分のペースを全く崩さない校正ちゃんの勢いに押されて、とりあえずは、僕の方も雑念を振り払って本題に意識を向けることにした。さっきからいちばん気になっていた疑問を口にする。

(今回は何に間違いがあるっての?)

 校正ちゃんが黙って、円形テーブルの上に置かれた会議用レジュメを左の手のひらで示した。僕は、席の前に配られていたソレを手に取り、恐るおそる最初のページを開く。
 あの、けたたましいビープ音は鳴らされていないし表示ランプも消えたままだ。どうやら、その部分に間違いがあるわけではなかったようだ。続いて、目次の項目を上から順番に1項目ずつ指で押さえながら、校正ちゃんの様子を窺う。

「そこ! 開いて!!」

 押さえた指をどけると、そこには「新商品におけるウェアデザインの重要性」という項目があって、僕は校正ちゃんに言われた通りに、レジュメをテーブルの上に載せて、そのページを広げた。とたんに例のビープ音が頭の中に響いて、校正ちゃんの目の部分に着いているバッテン印の表示ランプが赤く点滅を始めた。