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水に解けた思い

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 水から掬い零す言葉に女性は答えるのだった。
《ゴメンネ》
――キミのせいじゃないだろ?もう気にしなくていいんだ。
あの人は、その友人に二度と会わないと宣言してきたそうだ。
《アイタイ》
――もう少し、待ってくれないか。気持ちを落ち着かせたいんだ。
あの人の気の済むまで待とうと思った。
《ムリシナイデ》
――大丈夫。この店は失くせないよ。
あの人は、傍目から見ても働き過ぎなほど、店をほとんどひとりで守っていた。
《イツカカナウ》
――そうだよ。きっといつかその日が来るさ。
お互いに店を守りながら一緒になれることを願っていた。
《サミシイ》
――何か、ふたりの大切なものを作ろう。
そう言って、縁日で掬った二匹の金魚を飼うことにした。
此処の店に置かれた水槽の中で、二匹の金魚は仲良く泳いでいた。
時々、餌をあげに訪れた。
 
そんなある日のこと。
餌をあげに訪れ、目にした光景。床に金魚の餌が散らばっている。
「どうしたの?もうすぐ開店なのに床が汚れてるよ」
あの人が、床に倒れている。額から血を流しながら……。
「いやぁー」
そこからの記憶は、真っ白な布を被され、包み込まれたまま失ってしまった。
気がついたとき、お茶屋の兄さんの悲しげな顔が目にはいった。
 死因は、過労からの眩暈か、脳に支障をきたしたか、はっきりとは聞かされなかった。
額からの流血は、倒れた拍子に水槽の角で切ったものだったと聞かされた。
そのときに飛び出した一匹の金魚も 誰かが水に戻したが死んでしまった。
独りになってしまった。そして一匹になった金魚。
作品名:水に解けた思い 作家名:甜茶