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カムイ

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「ぐずぐずするな!・・・そこ! 立ち止まるでない!・・・本日分の仕事を終えるまで食事はなしだ! ワシまで飢え死にさせる気か!」
 革で出来た鞭を振り回して、監督官は叫んでいた。

 山や森から木を切り出し、枝を取り除いた大きな丸太のまま、ふたりで担いで運搬をする。その丸太を細長い同じ大きさに切り揃えて、枕木を作っていく。
 ある者たちは、山から掘り起こした大きな石を細かく砕いて、砂利を作る。そして、それを運ぶ者たち。
 全国から、出来るだけ多くの出稼ぎ人足をかき集めても、十分な数は集まらない。囚人はそれらの人々とは別待遇で、特に過酷な部署で使役される、貴重な労働力であった。手軽な、使い捨ての駒として。

 カムイは、砕かれた石を目いっぱい詰めた袋の持ち手を額で支えて、背中側に袋を回し、うつむき加減で足を動かしていた。足には、逃亡を防ぐための鉄の玉が付いた、足枷がはめられたままである。
 
 線路の敷設は技術者集団が行う。それが終わり、彼らが他に移ってからが、囚人の出番となる。付けられた印通りに、等間隔で枕木を敷いていき、砕いた小石をばらしていくのだ。
 雪が降るまでにそれらを終わらせる為、特に多くの人々をつぎ込んで作業を急(せ)いていた。
作品名:カムイ 作家名:健忘真実