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カムイ

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 いつの間にか、そばに来ていたセタエチが代わりに、目を見開いて尋ねてきた。紐を解かれたセタが、セタエチにぴったりとくっついて寄り添っている。
「父ちゃん、きょう、かえってくるのか?」
「セタエチ、すまん。ちょっと事情があってな、セタが・・・巡査に咬みついたが為に、驚いたそやつが刀を抜いてしまった。切られた傷は、たいしたものではない。もう血は止まっているはずだから、後でさらしをはずしてやろう・・・そうさな、父ちゃんは・・・すぐに帰って来れるさ。少しの間のことだ。その間は、ワシらでここを守っていこう、なっ」

 セタエチは、寂しげな表情を向けていた。ひとりで父親をやっと捜し当て、一緒に暮らすことが出来るようになったのに、今また遠くに行ってしまい、いつ会うことが出来るのか分からない、という不安が心いっぱいに広がっていった。
「いつ、かえってくるんだ」
「それは・・・さぁて・・・」

「セタエチ、小屋に入ろ。文左衛門さんも、どうぞお入りください」
 小屋の扉の前で、背中を向けたまま顔を少し傾げさせて、優しい声で言葉を掛けた。
 しかしそこには、重苦しい空気が淀んでいた。
「いや、ひとりになって考えたいことがある。今夜は遠慮しておこう」
作品名:カムイ 作家名:健忘真実