カムイ
雄作は実は、鈴が雪の日にカムイを訪れる以前からカムイに興味を抱き、度々密やかにカムイの住まう場所に行っては、その暮らしぶりや様子を探っていたのである。
無論、カムイが時々、余市に行っていたこともつかんでいる。女に会うために・・・だが、直接会っている形跡はなかった。
これは、人を雇って調べたことではあったが。
それでも、10万両の隠し場所はつかめないでいた。何人もの人々が、カムイに狙いを定めていたからでもある。
それらの人の存在をカムイは知っており、いつもうまい具合に彼らを、道中でまいていた。
そして彼らは連帯することなく、お互いを信じられずに単独行動を取っていたから、道をくらますのは簡単だった。
しかも誰も、カムイの居場所を警察に通報しようとは、思ってもいなかった。手配書のことは、多くの人が知っていたにもかかわらず、である。
死んだ巡査は悪評高く、死んでも当然だ、と彼らは思っていたし、カムイが殺したのではない、ということも知っていたからでもある。
誰もが、いつかは10万両を、いやほんのわずかでもいいから自分の手に、と夢を抱いていたのだ。ある意味、それを楽しみとして、生きがいにしていたのかもしれない。
それが、鈴の女心・・・嫉妬心から、いともあっさりとカムイが警察に連行されてしまうことになったのである。
雄作にとっては、笑わずにいられようか。
カムイは、大金の隠し場所を教えるであろうか。警察は組織として自白を強要するのか、あるいは誰か個人が、密やかにカムイを抱き込むのであろうか。
ここは望見しているしかないな、と雄作は考えていた。
警察はどんな手を使ってでも罪を作り出し、罰を与えることが出来るのだ。