カムイ
カムイは弓矢で狩猟をしながら、余市を目指していた。
弓矢の技術は、タナイヌの家族と生活を共にしながら身につけ、腕はかなりのものになっている。シカ猟だけでなく、クマ猟にも参加して実践を積んできている。
クマ猟は、狩猟技術の粋を尽くしたものなのである。
山林に対する畏敬を含んだ知識。
強大な猛獣と争う勇気。
強い弓を作り、トリカブトなどを使った猛毒の調合は、価値の高い狩猟技術とみなされている。
熊皮や熊胆は優れた商品となり、熊肉は特別な、神の恩恵を象徴する食料とみられていた。
成獣を仕留めた後に仔熊が残されると連れ帰り、1〜2年ていねいに育てた後、盛大な熊送りの儀式(イヨマンテ)を執り行い、親元である神の国に送り返す。
熊の仔は、キムンカムイ(山の神=熊)が、その子どもを託してくれたことを意味し、神の特別な期待を負ってきており、災厄を除いてもらえるものとみなされている。