カムイ
死んだ巡査は、お前さんの仲間のひとりと親しかったようだ。それで私のことを嗅ぎつけ、その仲間たちから私の情報を得ていたんだ。
札幌は、余市へ行くための通り道だからな。それに方向は少しそれるが、蝦夷富士へも通じている。
いつもそいつはひとりで、私をつけてきた。人を信じちゃあいなかったんだろう。時々、山道の途中で待っていてやったよ。そして、言ってやったんだ。
「こんな山の中へ、なんか用事でもあるんですか、私は山を越えて行くんですがね」と。
「いやいや、山菜の宝庫があって、君に見つけられないようにと見張ってたんだよ、ワハハハ」なんて見え透いたことをゆうんだ。
いつものように川に入って砂金を採り、山道に戻ってきたところで、そいつは現れた。手に銃を持っていたな。
「そうか、やっぱりここいらなんだな。その場所に案内してくれよ」
と言って脅しで、上に向けて撃ちやがった。
ハンッ、運が悪いことに、弾は蜂の巣に命中したんだ。
蜂はそいつ目がけて襲っていくと、そいつは悲鳴を上げて、転げるようにして下って行ったさ。
蜂は私にも向かってきたのですぐさま川まで降り、中に入って横たわると全身を隠した。息をこらえ、苦しくなると水から口だけ出してな。しばらく上を飛び回っていたが、蜂がいなくなるのを待って、川沿いに、今までとは違う道を捜して下って行ったんだ。
そいつがどうなったのかなど、興味もなければ知る必要もなかったからね。
・・・そうか、死んだか。