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カムイ

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 江差から尾白内まで、幕府のご用金を積んだ荷馬車を運んだ。そうさな、警護する者も含めて全部で5人いた。
 慶喜様をお迎えして新しい蝦夷幕府ができるまでの間、どこか安心できる場所に隠して置くように、との命令を受けていたんだ。
 ところが、戦が不利な状況に入ったとの情報を得て、出来るだけ遠くに運んだほうが良い、と意見が一致し、山越えをしながら尾白内に出ると、船を調達して内浦湾を横切って、川を遡っては行ける所まで行った。そこからは歩いてだな、まずは隠せる場所を求めた。
 結局、ある山の、奥深い所に見つけた川の中に隠した。
 
 ああ、千両箱を担いで何度往復したことか・・・千両箱の中は小判ではなく、砂金だった。
 川に張った氷を割って、その中に砂金を沈めていったんだ。見つけられたとしても、一度に全部取られてしまうことは、まずないだろうと考えてな。
 雪はさほど深くはなかったので、山の頂上に立って、位置を確認しておきたかった。蝦夷富士(羊蹄山)が美しかった・・・と、それだけ言っておこう。
 それがいけなかったのかもしれない。

 次第に天候が崩れ始め、急いで下って行ったのだが、びっしょりと汗をかいた後だったから、舟を結えておいた場所にたどり着く前に、動けなくなった者が出てきた。
 そ奴を交替で担ぎながら下っていたが道が分からなくなり、とにかく低い方へと進んだんだが・・・。
作品名:カムイ 作家名:健忘真実