カムイ
小屋に帰ると、カムイは不在だった。
3人が悶々とした気分で時間を過ごしていると、日が暮れてから、3匹のウサギを携えて戻ってきた。
「カムイ、どこに行ってたんだい。大変な知らせがあるというのにさ」
「ほうれ、こいつを見ろ、これで鈴に靴を作らないとな、暖かいぞ。腹巻きも作れそうだ。次の冬が来るのが、待ち遠しくなるだろう」
「カムイ・・・」
嬉しげに獲物を掲げて見せ、優しさのこもったカムイの言葉に、鈴は涙を見せまいと、うつむいた。
代わって文左衛門が、手配書のことと、警察署で聞いて来た内容を話して聞かせた。
神妙に耳を傾けていたが、溜息をひとつついて言った。
「あいつ、死んだのか・・・お前たちが知ってのとおり、俺は砂金の隠し場所を知る、唯一の人物らしいな」
「時々そこへ行っている、ということも知っている。ワシがここへ来る前に・・・初めてお前さんと出会った時にいた連中も、網を張っていたはずだ。なんせ、10万両だからな。お前さんの凄腕と共に噂が立っていたとしても、不思議じゃァないわナ」
「俺の後をつけていた奴、岡っ引き・・・いや、今では巡査とゆうのかな、そうだったのか、死んだか」
「それで? 殺したのか?」
早く真実が知りたい、という気持ちを込めて鈴は、遠くに思いをはせている様子のカムイを見つめた。
セタエチは疲れも手伝って、すでに眠りに落ちていた。
鈴はセタエチに上掛けをかけてやると、三和土へと下りるそばの柱に、もたれる様にして腰を下ろした。
囲炉裏のそばで濁酒(どぶろく)の入った茶碗を前に置き、干し肉を焼きながらカムイは、鈴と文左衛門に訥々と静かに語り始めた。