カムイ
「銃が2丁、か」
カムイが、鈴が持ち込んだライフル銃を顔の横に構えていると、文左衛門が手元を覗き込んできた。
「ほぅ、スペンサー銃かい」
「文左はもしかして、彰義隊にいたんじゃないのか?」
カムイは銃を少し下げて、文左衛門を見つめた。
「ああ、その時ンは前装式のエンフィールド銃を使ってた。だがな、雨の中じゃ役立たずよ。大筒、アームストロング砲を前にしていては、なすすべもなく壊滅。ワシは、どうにか生き残ることができたがな。よっぽど、悪運が強かったとみえるわ」
文左衛門はもう1丁の銃を鈴から受け取ると、銃身をなでさすり、ためつすがめつしながら、しんみりと語った。
「それにな、7連発のスペンサーにはかなわなかった。幕府軍もこの高価な銃を所有していたのにもかかわらず、お城の蔵の中に、それはそれは大切にして、眠らせていたのよ。指揮を執っていた連中は、ボゥンクラよ。おかげで、ハン、多くの同胞を亡くしちまったヨ・・・」
「鈴、この銃で、自分の身は自分で守れ」
カムイは銃身をも一度眺めると、鈴に手渡した。
「ああ、カムイ、この銃2丁あるんだから、ひとつは使っておくれ」
「いや、俺にはこの弓矢と刀がある。これさえあれば、熊でも仕留められる」
「そうさな、ワシもカムイに倣って、弓矢で猟をしようと思う。ま、銃が必要になるのは、むしろ人間が相手の時だろうな」
銃身をなでさすっていた文左衛門、名残りを留めつつも、それを鈴に返した。