カムイ
雄作は窓辺に立ち、葉巻をくゆらせて外を眺めていた。
鈴がわずかばかりの着替えを入れた風呂敷を背にし、手に銃を持って馬を引いていると、従業員のひとりが鈴を呼び止め、倉庫へと連れて行った。
そこにはいろいろな食料や衣類、若干の生活道具などを積んだ荷車が用意されていたのである。またその中には1丁の銃と、多数の銃弾も含まれているのを確認した。
「専務には黙っているようにと言われましたが、妹君であらせられるお嬢様のことを、ひどく気に掛けておられます。これらは、専務の御命令で私どもが、あらかじめ用意していたものにございます」
荷馬車を操りながら事務所の窓にちらりと視線をはしらせると、葉巻を口にくわえて腕組みをし、こちらを見ている兄の姿を捉えた。
一瞬、視線が合ったような気がした。
あふれ出てくる涙をぬぐうこともせずに、炭鉱にある住まいを後にして来たのである。
4人で囲炉裏を囲んで、温かく煮つまった雑炊を食べながら、鈴の話を聞いていた。
鈴のとげのある言い方は影を潜め、穏やかな物言いに、変わってきていた。