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カムイ

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 なぜ、鈴の顔に痣ができたのか。
 鈴はカムイと別れた後、炭鉱の事務所にいる兄の雄作を訪ね、砂金の入った袋を差し出した。
「これ、使っていいよ」
 机に座って書類をめくっていた雄作は、差し出された袋を怪訝な表情で受け取り、その口を開けて覗き込むと、ため息まじりに言った。
「砂金じゃないか。お前もしや、カムイのところへ行っていたのか?  それで、しとねを共にしたという訳か。フンッ、馬鹿な奴だ・・・それで砂金の隠し場所は、聞き出してきたんだろうな」
 葉巻に火をつけて、煙を吐き出している時の雄作の手元を目で追いながら、鈴は声を落として言った。
「帰り道でオオカミに襲われて・・・カムイに、助けられた」
「・・・それで?」

 鈴を案ずるどころか、簡単な言葉しか返ってこなかったことに、逆に気持ちが昂ってくる。手を握りしめて、視線を険しくした。
「約束をした。すぐに戻ると」
「ならん!」
「カムイには息子がいて、私を必要としている」
「お前に、母親は、務まらん! 俺は、カムイと兄弟になるつもりはない。いや、むしろお断りだ。お前には、良い嫁ぎ先を見つけてやるつもりだ」
「銀行家だろ、いやだ! 私は・・・鈴は、カムイの妻になる!」
 雄作は、椅子から立ち上がって机の上にある呼び鈴を取ると、激しく振って鳴らした。

 しばらくして、従業員のひとりが現れた。
「鈴を部屋の一室に閉じ込めて、勝手に出ていかないように監視を付けよ」
と命じたのである。
 仮の住まいが、事務所に隣接して作られていた。
作品名:カムイ 作家名:健忘真実