カムイ
小屋の前には、荷馬車が止まっていた。
月だけを近くの木に結わえつけていると、その気配を察してバタンと戸が開かれ、現れたのは鈴だった。
振り返ったカムイを見て、鈴は「プフーッ」と吹き出し、指をさしながら、腹を折って笑いこけた。そんなカムイも鈴を見て、やはり指をさしながら、腹を突き出して笑い出した。
何事かと、小屋から飛び出して来たセタエチと文左衛門も、カムイを見て目をみはったが、ふたりを交互に指差しながら笑いあった。
カムイの顔は痣だらけとなって腫れあがっており、また鈴の顔、目の下から頬にかけて、青くなった痣を作っていたのである。
みんなの笑い声は、周囲の雪と青空に吸い込まれていった。
セタは興奮して、馬の周りを駆け回っている。
馬たちはセタが近寄ってくると、ブルルルルヒヒ〜ンと脚を上げて蹴ろうとしていた。