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カムイ

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 太陽が再び姿を現した時、暖かさが戻りそして、月の影がカムイにかぶさっていた。
 カムイは、月の眼に視線を当てた。月もカムイの眼を覗き込むようにして、ブルルルルルと鼻面を寄せてきた。
 カムイは月の頬に手を当てて優しく動かし、目を閉じる。
 月はそばにじっと佇み、時々頭を上下させていた。
 連れの馬たちは、そこらに散乱している飼料を食べ終えると、周辺に散らばり、さらに蹄で雪をかき分けて草を見つけると、鼻先を雪の中に突っ込んで、草を食(は)んでいた。


 たてがみと一緒に首に回した綱をつかんで、月の背に跨った状態で小屋に戻った。
 初めのうちは何度も後ろ脚を高く蹴りあげて、グルグルと動きまわり乗馬を許さなかったのだが、「ドゥードゥー」と、ゆっくりとした低い声を掛けながら頬をなで腹をさすりしているうちに、落ち着いてきたところを見計らって飛び乗ったのだ。
 和種馬の体高は、カムイの鳩尾(みぞおち)あたりである。
 乗ってからも、後ろ脚を跳ね上げて振り落とそうと動き回り、それに合わせて体が撥ね上がって、尻の置き場が定まらない。首に腕を回してしがみつき、優しい声を出しながら耳の周囲をなでさすっているうちに、次第におとなしくなっていった。
 月はがっちりとした、たくましい筋肉質の体を感じさせた。月の温かい体温が、股の間と足の接触部から心地よく伝わってくる。カムイの体温も、月に伝わっていっているであろう。
 
 小屋に向かい始めると驚いたことには、遠くにまで散らばっていた4頭の馬が駆け寄って来て、月の歩みに合わせおとなしく後を付いて来るではないか。カムイと月の捕り物の様子には、全く関心を寄せていなかった馬たちである。
作品名:カムイ 作家名:健忘真実