小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

カムイ

INDEX|62ページ/160ページ|

次のページ前のページ
 

 すさまじい吹雪が続いていたが、数日ぶりに風の音が止んで外に出てみると、空は青く澄み、久し振りにみる太陽は、光を雪に反射させて、眼をすぼませるほどにまばゆく、そしてほんわかと、暖かさを感じさせる気もした。寒さで縮込ませていた身体だが、両手を上げて大きな伸びをする。
 それでもやはり冷気は、肌の露出している箇所を突き刺し、呼吸を繰り返すにつれ次第に、その冷気が肺をも刺して、胸が痛くなってくる。
 周辺の雪をスコップで脇に除けていき、歩きまわって押し固め、庇の下に積み上げてある薪に付いた雪をかき落としながら、ふと文左衛門の小屋の方向に目をやると・・・小屋は消えていた。

 はやる気を静めながらカンジキを足に取り付け、雪を踏み固めつつ小屋があったあたりまで行くと、ずっしりと厚みのある雪を乗せたまま屋根は落ちている。小屋の中のすべてを、押しつぶしてしまったのか。
 ところどころから、小屋の一部だった木が見えるだけである。
 文左衛門は無事、外へ出たのか? 
 あたりを見回したが、それらしき姿はない。外で雪に埋まっている気配もなかった。付いてきたセタは周辺をうろついて、においを嗅ぎ回っているが、特定できないようだ。
 もし、下敷きとなってしまっているのなら、もう生きてはいまい、
と思いつつも小屋のあった場所に向かって、「文左」と呼び掛けた。
 耳をそばだてて少し待ってみたが、やはり応答はない。
 いや、かすかにだが、何かを打ち付けているような音が、聞こえる。セタもその音を聞きつけ、ゥワゥワゥワゥ……、と前足で雪を掻き出した。も一度、「文左」と今度はもっと大きな声で呼んでみた。
 
「ぅォゥ・・・」
「お〜ぅ・・・」
 確かに文左衛門の声だ。文左衛門は、生きている。
「もう少しの辛抱だ。すぐに引き出してやるからな」
 セタをその場に残して、自分の小屋に、気ばかりが急いたもどかしい思いで引き返すと、スコップを取り上げ、再び文左衛門の小屋へと急いだ。
 心配そうに見上げるセタエチには、竹筒に濁酒(どぶろく)を入れて、毛皮と一緒に抱えて持って来るように、と命じた。
作品名:カムイ 作家名:健忘真実