カムイ
再び、オオカミとの闘い
右手には、森が広がっている。
緩やかな上り下りが続く雪原前方を、鈴は頼りない足取りで歩いていた。装着しているカンジキは、カムイが無理に貸し与えたものだ。それがなければ、足を運ぶたびに雪の中にはまりこんで、前に進むのに、ものすごい労力と時間を要する。
鈴の姿が見え隠れする距離を取りながら、カムイは周囲、特に森の方角に目を奔らせていた。
鈴は、馬を乗り捨てている。身動きのとれなくなった馬を、オオカミがほうっておくはずはない。
そして、人間の臭いを――鈴の匂いを嗅いだオオカミは、近くに留まっているはずである。
いた! 小屋を出てから、小1時間経っている。
森の木々の間を見え隠れしてゆったりと動いている、2匹のオオカミを認めた。鈴が行く方角と、平行に動いている。
カムイは背負い籠を負ったままで、鈴との距離を縮め、いつでも弓につがえることができるように、矢を1本取り、手に持って歩いた。
鈴は、オオカミにもカムイの存在にも、まだ気付いていないらしい。