カムイ
そんな毎日を送っていたある吹雪の日、小屋の戸を激しく叩く音がする。
開けてみると、外套を羽織って頭巾を深くかぶり、手袋をした両手を胸の上で握りしめて重ね、前かがみに小さくなって立っている、鈴がいた。
周辺を見回してから、鈴を抱き寄せるようにして招じ入れ、雪まみれとなり凍りついている外套と頭巾を脱がせると、歯をガチガチと鳴らし、小刻みに震えている。体が冷え切っていた。手袋も自分では脱げないほどにこごえていた。
急いで囲炉裏のそばに座らせ、温かい雑炊を与えて、気力が回復するのを待ってから、問うた。
「歩いて、ここまで来たのか? 馬は、どうした?」
「途中まで馬で来たが、吹雪き始めて、雪が深くなると、馬では動けなくなった。それで、馬を置いて来た」
「雪の中に、馬を、置いて来たのか? 死んでしまうぞ」
「分かっている・・・だが、仕方なかった」
「・・・何用があって、そんな無理を押してまで、来たのだ?」
「・・・・・・」
しばらく、沈黙が続いた。
カムイは辛抱強く、囲炉裏の火をかきながら、鈴が話し出すのを待った。