カムイ
サケを解体して身や白子は干して保存食にし、皮は衣類や袋物などに、骨は針や矢の先として使う。捨てるところは・・・セタが食べる。
そういった作業をしている時に、森で遊んでいたセタエチが帰って来ると、言った。
「アチャ、ことしはゆきがたくさんふるよ」
「なぜ分かるんだ」
「もりのりすがね、いままでのすあなをすてて、もっとたかいとこに、あなをつくっていたよ。だからね、ゆきは、たかくつもるんだ」
「そうか。薪をたくさん作って、中に入れておこう」
「そうじゃないよ。ゆきがね、こやを、おしつぶしてしまうんだよ」
子供といえども、自然に対する知識は己よりも豊かであることに舌を巻きながらも、これもアイヌ社会で育ってきたからなのだと、感謝し素直に従おうかと思う。
だが、ここには斜面を掘って、住まいを造れそうな山がない。
文左衛門と協力して木を切り出し、小屋の梁を強化した。木と木の隙間には、泥を詰めた。厠も無論中に作っているが、それを使用するのは外が使えなくなってからだ。
カムイの住まいの近くに作っている、3頭の馬を入れた厩舎も補強し、十分と思われるほどの飼葉と、暖房用の薪を積み上げておいた。
文左衛門は頑固にも、今までの自分の小屋で起居する、という。
「なぁに、危険を察知すりャ、すぐに逃げて来るから、その時ンなってから一緒に住まわせてくれりャァ、それでいい。頼んだわナ」