カムイ
「チニタ(夢)はどうしてる? 元気に、してるか」
セタエチ(犬好き)はしゃくりあげながらカムイと目を合わせると、赤くした目からさらに涙をあふれさせ、小声で、途切れ途切れにつぶやいた。
「ハポ(かぁちゃん)・・・は・・・しんだ」
「!」
「シサムが・・・ころした」
「何があったんだ!? ま、とにかく小屋に入ろう・・・ひとりで、よくここまで来ることができたな、たいしたもんだ。ひとまずは、ゆっくり休め。腹もすいているだろう」
泣きじゃくっていたセタエチは、水と食べ物を与えられて落ち着いてくると、そのまま眠りに落ちた。セタは、セタエチを守るのが仕事であるかのように、そばにうずくまっている。
チニタがなぜ和人(シサム)に殺されたのか、コタンはどうなっているのかを早く知りたかったが、7歳(注:数え年)の子供が説明できるだろうか。
コタンにすぐに戻ってみようと心に決め、文左衛門にセタエチを預けることにした。
疲れと安心からぐっすりと眠っているセタエチを確認すると、文左衛門の小屋を訪れた。