カムイ
「だがな、カムイとやら」
机の上で手指を組み、目元には笑みを浮かべて、カムイを諭すように言った。
「お前さんが、ここで何をしようとしているのかは知らねェが、この燃える石、石炭で、世の中は大きく変わるんだ。エゲレスでは石炭で動く、車、というもんが走ってるんだと。やがては、日本国もそうなる。いつまでも古いもんにしがみついちャァおれねェよ・・・お前さん、金を持ってるのなら、いつでもワシに投資してくれ。そうすりゃ、お前さんの暮らしを保障してやる。こいつは、専務で息子の、雄作だ。いつでも、こいつに言ってくれりャァいい」
と言って、窓辺に立つ男を顎でしゃくった。
雄作は興味なさげに、外を眺めている。
鈴が引っ張ってきた馬は、西洋から連れてこられた馬を繁殖させたのだという。体高は、木曽馬や道産子などの在来種より高く、走るのが早い。
栗毛の2頭の馬の手綱を手に持ち、カムイは黒い馬の背に直接跨って、悠然とした姿で住まいを目指した。背には、籠を負っている。
背後に、距離を取ってつけてくる、人馬の気配を感じていた。