カムイ
余市にいる加代の様子が気になったカムイは、猟をしながら、再び余市を目指した。
余市で目にしたのは、川にそって広がる開墾地に育つ、青々とした野菜と、栽培されたリンゴの、成長しつつあるたくさんの木である。それらは後に、“余市リンゴ” として広く出回るようになっていく。
蝗の発生は、局地的なものであったらしい。
加代が住む小屋を遠くから眺めたが、加代の姿を見ることはできなかった。小屋の前に幼子たちが集まって、遊んでいるのが見えただけである。
加代の子も、その中に加わっているのだろうか。
誰にも見られたくないカムイは、平穏な村の様子を確認すると、来た道を急ぎ足で戻って行った。
加代にひと目会いたい、籠に入っている毛皮を、なんとかして手渡せないものかと思案したが、今の女々しい己の姿をさらすのが、ためらわれたのである。