カムイ
ふたりは戸に寄りかかったまま耳を澄ませ、時々視線を交わした。
カムイが、文左衛門に問いかけるかのような視線を投げると、文左衛門は黙って、頭を左右に振る。
外の気配に神経を集中させながら、手を握りしめてじっと佇んでいた。なすすべなどなく、固く、固く握りしめて・・・。
いかほどの時間が経過したのか、羽音が聞こえなくなると戸口を少しだけ開いて見、次に頭を突き出して、畑を見た。
様相は、すっかりと変わっている。
外に出て、あたりを見回した。むき出しの地面に、蝗の死骸が無数にあるだけだった。
しばらく茫然と立ちすくんでいたかと思うと膝を折り、地面に両手をついてうなだれた。
これから、どうする!?
「これからどうする?」
カムイは自分に問いかけると同時に、文左衛門にも問いかけた。
後ろにたたずむ文左衛門も、自分たちの為に少しばかりの作物を育てていたが、無論すべて、やられてしまっている。
弱弱しい声で答えた。
「勘蔵を見捨てるわけにいかない。このまま、ここにいるつもりだ」
勘蔵の、オオカミに咬まれた傷は、膿んで悪くなっていた。
「・・・俺は、しばらくここを離れる」
「戻ってくるんだろうな」
「ああ」
「すまないが、分けてもらえる食べ物は、あるだろうか」
「ああ、好きにしてくれ」