カムイ
グルウウゥゥ、
アバラを見せたオオカミたちは、血にまみれた口吻にしわを寄せ低くうなり続けた。怒りと憎しみに満ちた目。上唇を震わせて鋭い牙を覗かせている。
カムイは荒い呼吸を整えるために深呼吸を繰り返し、両手をだらりと下げたまま、じりっじりっと前に出て目を細め、じっとリーダーとおぼしきオオカミの眼を捉え続けた。しばらく睨みあったが、気迫負けしたオオカミは、頭を低くしたまま後ずさる。
と、そのオオカミが後ろ脚をばねにして、跳びかかってきた。
瞬間体をひねって腰を沈め、右手に持っていた木刀を左下から右上に振り上げる。オオカミのアバラの折れる音が聞こえた。
クヮィ〜ンという声を発して、ドサ〜ッと地に落ちる。
その時、男たちが両手に火をかざして現れた。
ひとりは足を引きずって、痛々しい表情で顔をしかめながらも、ふたりで火の付いたままの木を前に差しだし、「ソラッ、ソラッ」と言いながら左右に振って後ずさるオオカミを追いかけると、ようやくオオカミたちは向きを変え、森の中に逃げ込んで去った。
アバラを折ったオオカミもよろけながら立ち上がり、仲間が去った後をヨロヨロと追いかけて森の中に消えた。