カムイ
3人の男たちが乗って来た馬は、彼らが作った小屋の外に繋がれたままでいた。
ある日の薄明時、尋常ではない馬のいななきが聞こえてきた。
しばらくして次に聞こえたのは、男の、空気を切り裂かんばかりの絶叫である。カムイは木刀を手にして急いで外に出ると、高台に駆け上がりその方角を見た。
オオカミの群れである。馬に襲いかかろうとするオオカミに気付いた男が、無防備のまま外に出たのだろうか。
小屋に向かって走った。
男の着衣は破り取られ、血だまりの中で無残な姿となって横たわっていた。その男を囲むようにして、オオカミが群れている。
もう、生きているはずもない。
数匹のオオカミは、馬を狙って低い唸り声を立て、今にも跳びかかりそうな姿勢を取っている。
去れ! 木刀を振ってオオカミを遠ざけ、おびえていななき、前足を高く突き上げている馬の手綱をほどいた。馬はそれぞれが好き勝手な方向へ駆け出したが、その後ひと塊となって、いずこかへ駆け去った。
オオカミはそれを追わず死んだ男に群がり、お互いに威嚇する声を発しながらむしゃぶりついている。追い払おうとしたが、10匹はいるだろうか、逆に襲いかかろうと前躯を沈めてうなる。
残りふたりの男は、小屋に入ったままでいるらしい。このままオオカミに好き勝手をさせると、味を占めて何度でもやってくる。
小屋に向かって叫んだ。
「火、だ! たいまつを用意しろ! 早く!」
覚悟を決めて、死体に群がっているオオカミの横腹、背中、頭を木刀で打ちつけていった。
クヮオ――ン、数歩ぶっ飛ぶ。次々にぶっ飛ばしていった。
ある程度腹を満たしたオオカミが向きを変え、カムイと対峙する。